非公開

□恋ってやつは、
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文化祭が終わった。

終わったんだから、普通は浮かれたこの雰囲気だって終わらなきゃいけないんじゃないかって思う。


でも終わったのは、彼女だけだったらしい。




2、お金では買えないらしい。




冷たいココアの缶を片手に、

屋上へ続く階段を上る。


うちの学校は屋上を開けることが出来ないから、人も来ない。

そんな誇りっぽい階段を上れば、

踊り場の陰に隠れるように座り込んでる羽柴。


「羽柴」

「ぁ・・・えへへ、見つかっちゃった」


いつもよりも力なく笑う羽柴のおでこに、
缶をこつんと当てる。


「あげる。」

「え?あっ、ココアだ!」


やっと、ちゃんとした笑顔になった羽柴の隣に腰掛ける。


「クラスの子達、探してた?」

「探してたよ。」

「そっか・・・じゃぁ、ココア飲んだら、戻らなきゃね!」


あぁ、ほらまた・・・

そんな笑顔、いらない。


「羽柴」

「せっかく伊武君からのご褒美なんだし!」

「羽柴」

「家に帰るまでが文化祭だよねっ!!」

「羽柴、もう良いから。」


俺らしくないけど、羽柴が今にも泣きそうだったから、

後頭部に手を回して、頭を抱き寄せる。


「よく頑張ったよ・・・お疲れ様。」


一瞬、ひゅっと息を吸った気がするけれど、

羽柴の手が俺のワイシャツを掴んだから、

きっとこれは間違っていなかったんだろう。


「あり、がと・・・」

「どういたしまして。」


ぽんぽんと頭を撫でてやる。


きっと、彼女に今必要なのは、

自動販売機で買ったココアじゃなくて、

俺の優しさ、なんて。





(ココア飲んだら一緒に帰ろう)
(ゆっくりでも許してくれる?)
(許さないって言ったら、俺酷い奴じゃん)
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