先輩のワタシ。
□お揃いの彼
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先程食べ終えたばかりの大盛りカレーはあの細い体の胃袋のどこに収まっているのか。
口直しと言い赤い彼の提案でクレープを頬張る。
メニューと穴があく程睨み合い、最終的に抹茶黒蜜きなことイチゴカスタードの2つまで絞り込み悩む音也。
見かねた奏が音也の好きな物2つにしようと提案する。
「いやいや。さすがにそれは悪いですよ。」
「ふふ。いいの私もイチゴ食べたかったし、音也くんは次に好きな子と来た時にこうやって半分このしてあげればいいでしょ?」
先程まで慌てていた音也の顔は赤くなり、思い当たる所があるのだろう。
カレーを食べ終え、店を出るときはきちんと手をつないで奏をエスコートしている。
目に留まった店に入り、気になった小物を見て、クレープを食べようと言ったのは音也の提案だった。
なんともマイペースな彼らしいデートプランだ。
「てか奏さんその台詞はイケメンすぎるでしょ。」
「ふふ、よく言われる。私友達にサプライズするのとか大好きだし、自分が男だったらめっちゃいい彼氏だと思う。」
真面目な顔をしてそう告げる奏に音也も思わず苦笑い。
内心、全くその通りだなあ、と感嘆する。
ーお互いに生クリームをとってくださいー
スタッフからの指令にも難なくクリア。
音也は赤らめながら、唇の端についたカスタードクリームを指先で優しく拭いう。
テレビ番組の企画とはいえ、いくらなんでも女の子の顔に手を寄せるのは緊張するし、奏の様に綺麗な顔が待っていては掌がじっとりと汗ばんでいるのがわかる。
とうの彼女も自分より緊張している人が目の前にいるとその緊張も感染してしまうのか、初々しい中学生のごとく辿々しさが益す。
音也は人との距離が近い。
物理的に。
1週間ほど寮で暮らしてみてわかったが、彼は会話するときに思いがけずその瞳の近さに驚くことが何回かあった。
クリームでここまで照れることではないだろうに。
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