先輩のワタシ。
□ココアの彼
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「ぷ。あははは。もう嶺二くんらしくないな。大丈夫だよ。から揚げでも作ればいいじゃん。」
「もー。僕は真面目に真剣に言ってるのに。奏ちゃんったらひどい。」
嶺二はわざとらしく泣き真似をする。
そんな嶺二を奏は頭をこずく。
「泣いてなんかないくせに。嶺二くんは嶺二くんらしくすればいいんだよ。大丈夫。」
そう言って奏はにっと笑った。
僕はまたその笑顔で虜になっちゃうんだ。
ダメだなあ。
可愛くて可愛くて仕方ない奏を抱きしめたいとか思っちゃうんだ。
それから藍のところの後輩は可愛いだの、蘭丸は俺はやらないと言って少し険悪なムードで過ごしているだの、この寮生活の初日の話を二人でしていた。
「そういえばさっき何で怒ってたの。」
「えー。奏ちゃんったら何のこと。」
とぼけた声を出すのは嶺二のいつものごとくだ。
「わかるよ。嶺二くんのことちゃんと見てるから。」
奏の真剣な目を見るとわかる。決して嘘をつくなと、目で訴えている。
僕はこの目に弱いんだ。
笑った顔も、怒った顔も、優しい声も全部が愛しいよ。
「だってレンレンもおとやんもひどいこと言ったじゃん。奏ちゃんはアイドルだって作曲だってこなしちゃうくらいすごいのに。ムカついちゃって。僕許せなかったんだもん。でもごめんね。そういう大事なことは奏ちゃんが自分で言うべきだったのに。」
我ながら子供じみた理由で情けなくなってくる。
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