先輩のワタシ。

□ココアの彼
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しばらくしてから解散し、後輩たちはそれぞれほ部屋に帰って行った。


先輩と同室だと言った時の驚いた顔といえば今思い出しても笑いが込み上げてくる。







春歌と奏は部屋で作曲についてあれこれ話していた。




春歌にとって憧れの先輩が奏だったのだ。


アドレナリンが放出され、今夜眠れそうにない。








奏の提案でお互いを名前で呼ぶことにした。





春歌はそんな恐れ多いですと顔を真っ赤にして断ったが、先輩命令と言われたら従わざるを得ない。


先輩命令なんて意地が悪く、少し卑怯かな、と思い直したが、やはり春歌には名前で呼んで欲しかった。







時計は深夜1時をさし、さすがにそろそろまぶたが重くなってくる。




春歌は昼間の疲れがあったらしく規則正しい寝息をたてている。











真っ白なシーツに体を預け、洗剤が香るタオルケットに身を包み、奏がうとうととまどろんだときに携帯にメールを告げる音がなる。









嶺二からだった。





「おとやんとトッキーのことで相談。レコーディングルームにごーごー。」












こんな時間ではあるが大事な同期のメールを無視できない。









5分ほどしておもむろにレコーディングルームの扉がゆっくりと開けられた。









「奏ちゃーん。やほー。ココア飲む?」



「これ私好きなやつじゃん。わーい。ありがとう。ふふ。嶺二くんどうしたの。一十木くんと一ノ瀬くんのこと?」





冷え始めた指先を暖める為に両手で缶を覆う。

黒い表面の缶と、ささくれのない手入れが行き届きシンプルなネイルが施させている白い指先が対象的で、酷く煽情的に見える。








以前自動販売機の前で休憩していて嶺二は奏が好きなココアのメーカーを覚えていた。



むしろこのココアを見るだけで奏のことを思い出してしまう。



自分も大概重症だなと思う。






「うーん。僕って先輩ってがらじゃないじゃん。トッキーなんかHAYATOもいれたら芸歴もけっこうあるし、おとやんはどっちっていうと可愛い感じじゃん。」










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