先輩のワタシ。
□初めましての彼
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「というわけでST☆RISHのみんなよろしくね。僕ちんがトッキーとおとやん。ランランがレンレンと真斗。アイアイがなっつんと翔ちゃん。ミューちゃんがセシルだからね。
そして奏ちゃんが作曲家コースの後輩ちゃん。」
「七海さんよろしくね。」
「はははい。美南さん。よよよよろしくお願いします。」
春歌は緊張と興奮が混じり頬を染めつつ奏にたどたどしい挨拶を送る。
奏はそんな様子を思わず、可愛いなと呟く。
「な!な!…美南奏!!!!」
春歌と翔は顔を真っ赤にして奏を見つめていた。
春歌はアイドルとして活動している奏が自分の指導者とは思わず驚いて当然だ。
HAYATOもファンでもあったが、奏の歌声や作詞については以前から気に入っていて、平たく言えば奏のファンだったのだ。
「まさか彼女が作曲家コース卒業だったなんて。私はてっきりアイドルコースかと。」
「…」
いつもは表情を崩さないトキヤだが今日は思わず目を見開く、真斗に至っては瞬きをするのも忘れ奏を食い入るように眺める。
「うん。俺もびっくり。美南奏って作詞はたまにしてるよね。でも曲作れるのかな。」
「そうじゃなかったらこのマスターコースにいないだろ。でもオレもレディの実力はわからないな。」
音也、レンは率直な意見を口に出していた。
しかし、先輩を前にしてそれは明らかに失礼な発言だ。
ST☆RISHが口々に言うのは当然だった。
美南奏はアイドルであり何枚ものCDをリリースし、最近全国ツアーを終えてきたばかりだった。
アイドルの先輩がいたのだから、当然自分たちの指導をするものだと思っていたのだ。
それが作曲家として七海春歌の指導につくというのだから至極当然の反応だろう。
そこで声を上げたのが嶺二だった。
「もーーーーー。言いたいこと言わせておけばーーーーー。奏ちゃんはね、miiizって名義でシャイニング事務所の曲作ってるんだからね。」
「レイジ!!」
その場が波打ったように静まりかえった。
中には疑いの表情、あるいは口をあんぐりとあけていた。
藍と蘭丸はやれやれとため息をつき、当の嶺二はしまったという顔をしていた。
その中で全ての視線が奏を向いていた。
当の本人はふう、とため息をついて、にこりとST☆RISHの面々を見つめる。
その笑顔は何を意味しているかわからなかった。
小柄な奏からは彼女に似つかわしくない有無を言わせぬ威圧感を放っていたのだ。
「私はmiiizという名義で作曲家として活動しています。作曲家として早乙女学園を卒業し、卒業後シャイニング事務所の所属になりました。社長の薦めで、現在では作曲と伴って歌の活動をしています。他に聞きたいことはありますか。」
「ほんとに美南さんがあの有名なmiiizなの?」
音也の質問に奏はくすりと口元に笑みを浮かべて言った。
「神宮寺くん。さっき言ったよね。私の実力がどのくらいかって。」
長く艶やかな髪を器用に高い位置でまとめる。
いたずらっこのような笑みを浮かべて部屋に置かれていた真っ白なグランドピアノにむかう。
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