アカネイア&覚醒&if短編

□いつか
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(カムイ支援Bネタバレ、カミラ支援Cネタバレ)
 サイラスの支援S見てないうえに、カミラ姉さんとのやり取りもCしか見てないのでなんかおかしいところあったらすみません。



「物覚えは昔からいいほうなんだ」

カムイに笑顔で答えながら、サイラスは悲しかった。
決して、こんな見苦しい感情を彼女に見せまいと笑顔でいたけれど、自分ばかりカムイを覚えているのは、他人が思うより結構つらい。
いままでずっと、「騎士の誓い」を果たそうと苦しい訓練も乗り越えてきた。
この先に、カムイと再会できる未来があるはずだと、なんども諦めようと思いながらも、結局は諦めきれずにここまで来た。

 一方でカムイが自分を忘れていたことは、割り切ったつもりだった。
忘れてしまったのは仕方のないことだし、結果的には昔自分と遊んだことは思い出してくれた。
これから、また仲良くなればいいのだと。
それでも、サイラスだって時には悲観的になったりする。
自分とカムイのお互いを想う気持ちにどれだけ差があるのかと、つい考えてしまう。
なんて、バカな。

「サイラス、ちょっといいかしら」

そんなときだった。
カミラが珍しくサイラスを引きとめたのは。
頼みがあるとか何とかで、騎士であるサイラスはカミラの言葉に耳を向ける。

「なんですか」
「カムイに伝えてもらいたいことがあって」
「俺で良ければ……」

わざわざ自分に伝言を頼んでもらえるのは嬉しい気もするが、少し疑問だ。
カミラがカムイと共にいるのはよく見かけるのに、伝言だなんて。

「私がどれだけあのこを愛しているのか、伝えてほしくて」
「え…」
サイラスは片眉をあげた。
「さ、流石の溺愛っぷり、という感じですが…ご自分で伝えられては…?」
「もちろん、そうしてるわ。
でもなんていうか、慣れが生じたらしくて、最近は響かないらしいのよ。
だからもっと、こう、多角的にいきたくて」
「多角的…ですか」

なんだか、面倒な気もするがサイラスには断ることはできない。

「わかりました、では引き受けましょう」


***


「カムイ」
「あ、サイラス」

カミラからセリフまで事細かく指定され、サイラスは微妙な心境でカムイのマイルームを訪れた。
なんと切り出そう。
少し悩む気もするが、まぁ伝えるのが自分にせよ、もとはカミラの言葉だからただ単純に切り出せばいいような気がする。

「カミラ王女から伝言があって」
「カミラお姉ちゃんから…?」
「ああ」

何かあったのかな、と少し心配そうな彼女にこれを告げるのは少し気が引ける気がするが、サイラスは言った。

「『あなたは私の可愛い子』」
「え?」
「あ、あと…」

ぶわっと顔を赤く染めたカムイに、サイラスはついどもってしまう。
が、まだ伝言はもう一つある。
サイラスはなるべく視線をずらしながら言った。

「愛している」

ああ、ちがう。『愛しているわ』なのに、「わ」を抜いちまった、などとサイラスはあまり重要でないことに気をとられる。
まぁでも、カミラ王女からだと伝えたから差支えないだろう。

「以上だ」

用は済んだし、マイルームに長居するとどこかの執事がうるさいからなと、カムイに顔を向ける。
と、カムイはさっき見た時以上に、サイラスまでもがつられて赤面するほど赤くなっていた。
どうやらカミラの多角的作戦は成功したらしい。

しかし、すこしうらやましくもある。
カミラくらい率直に伝えられたら、どんなにいいか。
もし、自分も愛しているのだと伝えられたら。だって本当は気付いていたのだ。
この友情が、彼女に会えない間ひとりでに大きくなって、いつしか愛情になっていたことに。彼女と再会したその日に、サイラスはとっくに気づいていた。

「さい、らす」
「え、あ、な、なんだ!」
「で、伝言ありがとう!」
「お、おおう!」

なんだかおかしな雰囲気の中、二人はぎこちなくそうやり取りした。

「カムイ…」
「な、なに?」
「――いや、なんでもない。
お、俺はもう行くぞ」
「あ、うん」
思わず口に出しそうになって、サイラスはあわてて踵を返しマイルームの扉に手をかけた。

「サイラス!」
「え?」
「私っ……ううん、お姉ちゃんにありがとうって…」
「わ、わかった。じゃあ、またな」

サイラスは、気持ちが悟られぬようにと、やたら丁寧に扉を閉めた。


「(いつか、お前にそう言える時が来たら、なんて)」
「(いつかあなたに、そう言われる日が来たら、なんて)」


   いつか


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