アカネイア&覚醒&if短編

□捕虜と信頼を築くお話
1ページ/4ページ


カムイがマイキャッスルを作るにあたり、いくつか作った建物がある。
まずは武器屋、道具屋、それからみんなの疲れをいやすために温泉と食堂を。

そして、もう一つは牢屋だ。

無駄な殺しはしたくない。
ならば、もし説得できる白夜兵がいれば捕虜と言う形で助命したいと思ったのだ。
兄弟たちはあまりこころよく思わないだろうから、そこで仲間たちの腕試しの場として闘技場を付け加える。
捕虜を戦わせるのはきのりしないが、殺し合いではないので、致し方あるまい。
最終的には説得するか報酬を与えることで傭兵として雇えれば一番いいとカムイは考えている。

今その牢屋に、つい最近捕虜になった白夜兵がいた。
職業はブレイブヒーロー、らしい。カムイはゼロからその情報を得、今から説得に向かうところである。
牢屋を訪れると今日の牢番のハロルドが椅子に腰かけていた。
カムイに気が付くと素早く立ち上がる。

「やぁ!カムイ様! もしかして説得にこられたんですか?」
「はい。お疲れ様ですハロルドさん」
「っはっはっは!正義のヒーローハロルドに疲れなどありません!」

相変わらず大声で笑うハロルドに、カムイは苦笑する。そういえば、ハロルドはついこの前ブレイブヒーローに転職したばかりだ。
もしかすると、その捕虜と通じ合う部分があるかもしれない。

「ハロルドさんは、捕虜の方とお話しされましたか」
「もちろんだ! 彼はなかなか心を開いてはくれないが、名前は明かしてくれた!
彼はウィーゼルくんと言うらしい」
「そうですか…ウェーゼルさんというんですね。私はこれからお話ししてくるので、あとは…」
「はい!このハロルドにおまかせください!お気をつけて!」

ハロルドの大声に見送られながら、カムイは牢獄に足を踏み入れた。
ウェーゼルが誰なのか、すぐに分かった。一番奥の正面にある牢屋の中で、一人のブレイブヒーローが前を向いて立っている。
入り口からでもわかる眼光。
どうやら、ここに来てからずっと立ったままのようだ。
疲れるだろうから、座ればよいのに…。

「こんにちは、ウェーゼルさんですね?」

カムイはなるべく笑顔で牢屋に歩み寄る。彼は無言でカムイを見返した。

「あ、あの、どうぞ座ってください。疲れているでしょうから」
「……」
「……じゃあ、私は座りますね」

もしかしたら、見下ろされるのが嫌いなのかもしれないし、あるいは失礼だと思って立ったのかもしれない。
少なくともハロルドに名を明かした彼は、良心と言うものを持ち合わせているようにカムイは思った。
案の定カムイが胡坐をかけば、ウェーゼルも冷たい地面に腰を下ろした。

「えっと…初めに言っておきますが、貴方を説得に来ました。話を聞いてもらえますか」
「……」
「私たちはあなたの仲間を殺しました。恨まれて当然だと思います。
ただ、現場は見ていませんがあなたは捕虜になり、生きています。
戦いたくなければ武器の整備など出陣準備の場で協力してもらうのでも構いません、暗夜兵になる気はありませんか」

ウェーゼルは青い目を少し目を細めただけだった。
今日のところはこれ以上言っても無駄だろう。少し間をおいて、今言ったことを考えてもらわなくてはならない。

「…あの、また来ますね」

青い目は、じっとカムイを見てから伏せられた。


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ