アカネイア&覚醒&if短編

□闇に落ちる
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分岐点までのネタバレです
*とにかく暗夜が大好きなカムイ目線で書きました。一部脚色あります。
白夜大好きな人には不快かもしれませんのでご注意。(ていうか自分自身ひどい話だなーと思ってます)
私も白夜好きですけど、一度こういうダークヒロイン的なのかきたかったので、大丈夫な人だけどうぞ!



 ギュンターさんがガンズさんに落とされて、怒りのあまり暴れてから、お父様にいただいた剣にひかれて、私は闇に落ちた。
リリスさんに助けてもらって、元の場所へ戻ってきたけれど、今度は誰かに背後から襲われ、再び闇に落ちた。

災難な日だと思う。

「――!?」
「目覚めたか」

目が覚めると、あまりなじみのない小屋の中に横たわっていた。体を起こして、火に照らされた相手の顔を見る。

「さっきは不意打ちですまんな。まさかお前とは思わなくて」
「あなたはたしか、白夜のリンカさん」

ということは…ここは白夜王国!?
瞬時に全身を恐怖が駆け巡った。
相手は温厚そうな表情をしているが、私を白夜に連れて行くと語った。そ
の笑みは、余裕の笑みなのだろうか。
体が震えそうになるけれど感付かせないように気を張って、誘導されるままに雪景色の外へ出た。
そこに待っていた緑の忍……あれも私が命を取りきれなかった白夜の者だ。
こんなことならお父様の言うように殺しておけばよかったわ。そして私は彼の言葉に驚愕する。

「お待ちしておりました、カムイ王女」



――闇に落ちる――



 取り合えず、兄さんたちと生きて合流するために、私はおとなしく二人の誘導に従い、白夜王国本土へやってきた。
闇夜の暗い感じとは違う、日が当たり、明るい配色の建物が多い国で、なんだか落ち着かない。
落ち着かないうえに、状況がまったくわからない。
スズカゼさんが王女、と言ったのは聞き違いだろうか。
それよりも、あのあと戦場に残っていたはずの兄さんたちが気がかりだ。
そう簡単に負けるわけはないと思うけれど…。それに兄弟のことばかり気にかけている場合ではない。
正直言って、いま一番危ない状況なのは私自身なのだから。

しかし、気を張りすぎて少し疲れてきた。
警戒は解けないけれど、この二人は私を殺す様子もない。
驚くほど自然な表情で私を案内する様子に鳥肌が立つほどだ。
だけどリョウマ王子を見た瞬間そんなものはふっとんだ。
あふれ出る威厳。認めたくはないけれど、マークス兄さんを同じような空気を感じた。
おそらくあれは第一王子に違いない。
この人は、と尋ねると第一王子だとリンカさんに教えられた。
リョウマさんは、じっとこちらを見ている。
わかる。この距離で見れば彼が威厳だけではなく、相当の手練れであることくらいわかった。早々に王子のもとへ誘導された以上、やはり殺されるのだろうか。

この状況で逃げ出すのは、あまりに無謀だ。涙がにじんできて、やけくそに言った。

「もう、いいでしょう。処刑するつもりならば早くして――」
「戻ってきて、くれたのですね」

私の訴えは、その声にさえぎられた。
いい加減にしてほしいと思いながら振り向くと、上品そうな女性が涙を浮かべて立っている。
そろそろ状況を説明してほしい。殺すの?殺さないの? 
殺さないなら、早く返して。兄さんたちのもとに。

女性は、美しい黒髪をしていた。
歳はわからないけれど、たぶん若く見えるほうだ。
戻ってきてくれた、と言うのは、任務を終えたリンカさんとスズカゼさんにいったのだろうか。
にしては、涙を浮かべるほどではないと思うし、そもそも私のほうを見ている。
まさかと思うけれど、確認をとるように私は言った。

「あの、私に言ったんじゃないですよね?」
「良かった…よく無事で…!」
「え?」
「私の子…カムイ!」

私の…子…? 
この人は頭が沸いているのだろうかと驚いているうちに、彼女は優美な足取りでこちらへ向かってきた。
に、逃げたほうがいいのかな。
いやしかし…穏便に済ませるために、じっとしておく。
武器を持っている感じもないし。
彼女は本当に嬉しそうに私を抱きしめた。
すみませんが、ひとちがいでは。

「あの、ちょっと意味が…」
「覚えています、その瞳の色と髪色、間違いなくあなたは私の子…!」
「ちょっ…どういうこと!?」

ちょっと!急になんなんですか! 
気味が悪くて、やっぱり後ずさる。
彼女の腕から逃れて、自分が冷や汗をかいていることに気が付いた。

「カムイ…?」
「あ、あの!私が捕まっていることは前提です。
お願いできる立場ではないと理解していますが、説明してください、何が何だかわかりません」

女性は、一度リョウマさんと目線を合わせてから、言幼い子供に言い聞かせるよう、私の顔を覗き込んだ。

「――いいですか?あなたは白夜王国の王女…幼いころ、暗夜王国に連れ去られてしまったのですよ。
そして私は母のミコト。私たちは家族です」

ね?、とミコトさんはリョウマさんに呼びかけ、彼も同じくうれしげに頷く。
ちょっと……やっぱり、意味不明なんですけ
ど。

「あなたが…母親…?う、嘘です!信じられるわけありません!」
「だろうが、これは事実なのだ。俺がお前の兄だ」

兄さん…?
なにいってんの、私の兄さんはマークス兄さんだけだわ!

「お前がさらわれた時のことは、はっきりと覚えている。
俺たちの父親が襲撃に会い、命を落とした時だ。
――本当に、憶えていないのか。少しも思い出せないのか?」

リョウマさんは顔をしかめた。覚えてるわけないじゃない、そんな幼いころのこと。

自分と周囲の温度差に、私は逆に冷静になっていた。

証拠はないが、これが事実ではないと言う証拠もない。
生き残ってみんなと再会するためにも、敵意をむき出しにしないほうが良い。

私は何か覚えていないだろうか?
たしかに、おぼろげであるか何か恐ろしい過去があったような気はする。
でも、やはりわからなかった。

「まぁ、思い出せないのは仕方ない、今すぐに信じろとは言わないが……先刻襲撃の報告があった。
カムイ、ともに来て暗夜王国を見極めてほしい」

…マークス兄さん、なんか大変なことになってきました。
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