アカネイア&覚醒&if短編

□信念
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<サイゾウ>支援会話1ネタバレ


自室だから助かったけれど、いよいよ嗚咽が収まらなくなってきて、枕に顔を押し付ける。
みっともない、早く泣きやまないと、目が赤いのをみると皆はきっと心配するだろう。
こんな自己中心的な涙を白夜の人たちに心配させるなんて、そんなことできないから。
はやく止まって。

その時、自室の外で物音がした。
私の部屋は木の上に立ってるから、用事もなく人が行きかう場所ではない。
もし、誰かが緊急の用事で来たのだとすると……。
どうしよう、居留守しようかな。気配に疎い私は、そこにいるのが誰だか、分からない。

「……カムイ」

いつもはノックなのに、今日に限って声をかけてくるのは、あれはサイゾウさんの声だ。
これでは居留守したってばれてしまう。

「……サイゾウさんが、足音を立てるなんて、珍しい、ですね」

嗚咽を隠しながら返すけれど、たぶんサイゾウさんには私が泣いていることなんかわかっているだろうな。

「お前が……お前が泣いているからだ」
「お、驚かせてすみません。
でも、何でもないですから」
「何でもない……だと?」

ぎぃぃ、と扉が開いて、私はあわてて布団をかぶる。

「お前のことは監視中だと言ったろう。
お前がこの頃あまり良い調子でないことくらい、人の感情に疎い俺とてわかる」
「ほんとに、疎いですね。
女の子が泣いてるときは、そっと、しておくものです」

出て行ってくれればいいのに、サイゾウさんは部屋に入ってきて、寝台に腰を下ろした。
寝台がサイゾウさんの重みで沈むのがわかる。そしてぽん、と背中に手を置かれてびくりと驚いてしまった。
布団越しでも伝わる、暖かい手。

「そこまでため込むこともないだろう。俺には話せんか」
「いや、です!こんな汚い私を知ったら、みんなに嫌われるもの!」

みんなに嫌われたら、どうすればいいの?
サイゾウさんのため息が聞こえる。

「きれいな人間ばかりなものか。
俺のこの手も血まみれだ。誰しもがみな、己の闇を抱えているものだ。
ただ、お前は背負いすぎなのかもしれんな」

背負うなんて、私は何一つ背負えていないよ。

「兄にあのような目を向けられて、怖かったのだろう」
「……え!?」
「見ればわかる、お前は怯えていた。
それでもお前はやらねばならん、自分で決めたことを。ただ、時には人に頼っても……」

サイゾウさんは、一言ひとこと探るようにゆっくり言った。
布団から少し顔を出してみると、サイゾウさんの広い背中が見える。
寝台に付いている手をつつくと、私の手を握ってくれて、たまらなく安心した。
そうだ、こんなことで悩んでる場合じゃないんだ。これを悔やむかどうかは――すべて終わってからで良い。
でも、今だけは、私の手を握っていて。
そしたら私はまた、前に進むから。


握った手




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