アカネイア&覚醒&if短編

□信念
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白夜12章ネタバレ

辛かった。
ずっと兄弟として暮らしてきた皆を裏切ることが、どんなことなのか。
わかっているつもりだった。だけど――私は、何もわかっていなかった。

どこかに甘い気持ちの自分がいた。
和解できるんじゃないかって。
戦わずに、説得できる時がいつか来ると、兄さんに私を殺さないでって頼むエリーゼさんをみていたら、そう、思ってたんだ。

だけど現実は、思ったほど甘くなかった。
現実の兄さんは、憎悪に満ち溢れた目で私を見ていた。
今回の戦いは、なんとか逃げ切ったけれど、今のままでは私は殺されてしまう。
嫌だ。
こんな自分が嫌だ。
戦争を終わらせたいのに、そのために暗夜を裏切ったのに、結局私は自分が大事なんだ。

夢を見た。
兄さんが私を八つ裂きにする夢。
兄さんは――兄さんは泣いていた。
苦しくて、涙をぬぐおうと腕を伸ばすけれど、もう腕は動かなくて。
自分で涙をぬぐった兄さんは、私を睨み付けて、その目が余りに恐ろしくて逃げようとするけれど、脚ももう動かなくて。

私はこの世界の異分子だ。
白夜で生まれ、暗夜で育ち、そして白夜に返ってきた。
自分でも思うけれど、普通なら暗夜に残るべきだったと思う。

生まれや故郷より絆が大切だと、いったい何人に説いてきただろう。
私を信じてほしいと、何度頼んだろう。

だけど、最初に絆も信頼も裏切ったのは私自身で、いつか自分が戦えなくなって、みんなから見捨てられる日が来るような気がしたら、どうして良いかわからなくなった。

私は一人、止まらない涙に悪戦苦闘しながら、声を押し殺した。


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