テリウス短編
□あの日の約束
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「!!」
飛び起きると、窓の外はオレンジ色だった。激しい空腹感。
朝寝たのに一度も目を覚まさなかったんだからそりゃそうだ。
水分摂取して、夢がフラッシュバックした。
会社の制服はシワになったし、たぶん汗もかいたしメイクはしてないし、髪もぼさぼさ。起き上がってもフラフラ。
顔を洗って目を覚ます。
意識は覚醒したのにまだ夢の中にいるみたいで、気が付いたら駅に来ていた。
会社までは3駅。帰宅する学生もたくさんいる。なんだか何も考えられないけど、すぐにジェルド部長に会いたかった。
会議中かもしれないし、出張が入ったかもしれないけど、気にしない。
会社に飛び込んでエレベータで上がって。開くと前にはアルダーとその同僚がいた。
「レティ? 今日は……」
「アルダー! 将軍は!?」
考える前にそう言っていた。アルダーの同僚が、驚いた顔をする。
あれ、私いつからアルダーのこと呼び捨てに…?
「あれ…? すみません、アルダー、さん」
「いい、ほれが本来の呼び方だ。あのひとならまだデスクワークだ」
頷いて走り出す。
「あ、」
呼び止められて急停止。
「なに?」
「フラフラだから気を付けて。惚れた男の為でも、もう死なせない」
「!…うん、ありがとアルダー!」
アルダーの同僚は混乱してるみたいだけど、うまくやっておいてくれるだろう
。頭はガンガン痛いけど走る。いつも将軍がデスクワークしてる部屋に。
ノックも忘れて飛び込んだ。
「!?」
驚いて顔を上げる将軍は、スーツ姿。でも、何度も見てきた。
デスクからこちらを見るその体制は。
「お前…風邪は」
「将軍」
「!?」
将軍が立ち上がったら、椅子はコロコロと後ろへ行ってしまう。見つめ続けたら、やがて将軍は笑みを浮かべた。
私の前まで来て、ポンと頭に手を置く。
「ひどいツラだ」
「知ってます」
「この半年、お前らしくもなく頑張りすぎたからそうなるんだ。
もう、日常が日常であり続ける時代になったのに。
いつになっても俺のことを思い出さないくせに必死に働きやがって」
「ごめんなさい」
「っは。明日からは仕事が滞りそうだな」
やれやれ、と言いたげだけど、背中に回された腕は優しい。
戦のない今、あの頃よりはたぶん細くなったんだろうけど、同じく細くなった私にはやっぱり大きく感じる。
「でも仕事はね、ちゃんとやるんです。同じ後悔したくない。使える部下でありたい」
「それだけか」
「あとは、嫌われるのも嫌だし」
「今更だな」
「将軍」
「ん」
「生まれてきてくれて、ありがとうございます。私生きててよかったです」
「ふん、当たり前だ」
半年前、部長は知ってて私をこの課に入れたんだ。
私は何も知らずに、でもどうやら死んだあの日の誓いは、忘れてなかったみたい。
もしまた貴方と出会えるなら、今度はもっといい部下になるから。
貴方に苦労かけないし、貴方の役にたつし、貴方を悲しい顔にさせたりなんかしない。
だから。
ぐ〜ってお腹が鳴るの同時に、頭痛を思い出して泣きっ面にハチなんだけど、愉快そうに笑って「送る」と言う将軍が、大好きだなって思ったら幸せだった。
あの日の約束
夏に書いたとき、次は救済夢書きたいっていってたから、こうなった