テリウス短編

□ページはめくられずに
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静かな城の中庭。
まだ昼間だけどその小さな庭には出撃準備として様々な物資の木箱が置かれていて人は居ない。
けれど風が心地よくて、こんな場所にこそ彼はいるんだろうなってわかる。
高く積まれた木箱の向こうをのぞけば、ほらやっぱり。

「なんだ?」

手元の本から顔を上げて、ノイスさんが言った。
私は首を横に振り、隣に腰掛けて自分の本を広げる。
ノイスさんは特に気にした様子もなくまた本に視線を戻した。
せっかく一人きりで集中してたところ悪いけれど、私はこうしてノイスさんの隣で読書するのが趣味なのだ。
読めない字があったら教えてもらえるし、なにより安心するし。
少し読んでから、ちらりと視線を上げてノイスさんを見る。
無骨な手で開かれた本の中身は私には訳が分からないほど難しくて、いつもは戦いのため眼前を見据える目は、今はそっと下に向けられている。
青い目に茶髪がかかる。
また、目線がこちらによこされて思わずドキリとしてしまう。

「どうした?」

また、首を横にふる。

「ううん、なんでもないの。読んでて」
「そう言ってもなぁ、見られてると緊張しちまう」
「ガラにもなく?」

ノイスさんは無言で視線を本に戻し、私の肩を抱いた。
本の内容なんか頭に入ってこない。
もしノイスさんも本の内容が頭に入ってなかったら、結構嬉しいなぁ。


 ページはめくられずに

あとがき
暁の女神で最初にでてくるおじさんがこの人でした。俺についてこいやー、な登場と読書好きというギャップで惚れました。
レベル的に最終スタメンには入れなかったけど勝ち数は五位と5ポイント差で六位でした。
もう少しだけ戦ってればデイン組唯一ランクインしてたかもしれません笑

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