テリウス短編

□もし、生まれ変わったら
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デイン駐屯所に勤務して、しばらくになる。
あんまり人と関わるのは好きじゃないからいつもおとなしくしているんだけど、一人のめちゃくちゃな上司のせいで私の静寂はぶっこわされた。
アルダーはこんな私をかわいそうだと言ってくれるが同情はいらん。
同情するならあの上司に私に構わないように言って欲しい。
だけどアルダーも上司のめちゃくちゃぶりに困るうちの一人なので、助けてはくれない。
私が構われているときはアルダーが逃れられるからね。誰から、ってのは野暮な質問。
ジェルド将軍にきまっとろうが。

「レティ」
「、」
「茶が飲みたい」
「はぁ、」
「俺は茶が飲みたいと言ったのだ。
そもそも不憫に思わんか。
武勇で勝ち残ってきた男が書類に手を焼いているのだ。
いたわりの心を持て」

ほら、こんな風に。
お茶くらいその辺の女中にたのみなさいよ。

「上司の命令は全て」
「すみやかに、確実に遂行」
「わかっているではないか」
「…わかりましたよ」
「ちゃんとお前が入れるのだぞ」
「はーい」

めんどくさいけど、お前が入れろっていわれるのを待っている自分がいたり。
なんだかんだ丁寧にお茶を入れて持って行って、顔もあげずにお茶を飲む将軍の前の席に座る。
普通なら無礼かもしれないけど、ジェルド将軍はあんまり文句は言わない。
睫毛が影を落とす紫の瞳は真面目に下を向いている。
めちゃくちゃだけど、やることはやるんだよね、この人は。
めちゃくちゃなこの上司と、アルダーがいて。それだけで、おなかいっぱい満足だった。
なんかわかんないけど、暁の女神とかいうのがベグニオンに歯向かったりしなければ、ずっとこのままだった。
ここに勤務して、退職金もらってその辺で老後を過ごすはずだった。
けど、戦況が変わっていく中私たちは王都に勤務することになって。
まぁこんな役立たずの私を王都に連れて来てくれたことは嬉しかったけど、暁の団ってヤツらは面倒な奴らで、将軍はどんどん追い込まれて、ついにはすべての罪をなすりつけらたりして。

「すべて、終わりですか」

アルダーの言葉に、涙が出てきた。
ジェルド将軍はそんな情けない私の手を引いて立たせた。

「道連れにするなら最高の獲物がいるだろう」
「ジェルド隊最後の大仕事ってわけですね」
「面倒くさがりのお前だ、いやなら今のうちに逃げるといい。
お前は軍人の面構えではないから」

今までめんどいって言っても戦場までひきずっていったくせに、こんな時ばかり。

「行きますよ、だって私の居場所なんて、ここにしかないから」
「そうか」
「レティはこう見えてきジェルド将軍に忠誠を誓ってますからね」
「アルダー適当なこと言わないで」

忠誠より、もっと。

私たちにとって最後の戦いは密かに行われるはずだった。
相手は少女一人。別の任務に就くはずだったアルダーもつれて、少数の部下だけでさっさと済むはずだった。
だけどなんて悪運、突然漆黒の騎士が現れて、連れてきた部下たちはどんどん倒れていった。

「アルダー!アルダー嫌よ!逝かないで!」

暗闇の中、アルダーが倒れたのがわかった。

「レティ、頼む」
「え?」
「ジェルド将軍を最期までお守りするんだ、恥ずかしいだろう?部下が生き残ったりしたら」
「アルダーっ…」
「惚れた男のために死ぬといい」
「知らないふりして、分かってたんだ」
「あたり、まえさ。俺たち部下は、なんだかんだ将軍を慕ってたんだから、な。
お前が将軍をみるめなど、とっくに…ぐふっ」
「アルダー!」
「さぁ、早く行くん…だ…」

息絶えたアルダーを看取って、ジェルド将軍を探して走る。
ジェルド将軍が明かり消したりするから私まで将軍のこと見失っちゃったよ、もう!
でも暗闇だけじゃない、涙のせいでもあって。やがて凄まじい気のようなものを感じた。
暗闇の中にある漆黒。
まぎれて見えなくてもその存在感はすさまじくて、そこ鎧がわずかに紫色の光を反射した。
状況は分からないけど、私は漆黒の騎士の前に立ちはだかった。

「がっ…ぁ…」

なんだ、これ。すごく痛い。痛い痛い。熱い。でも寒くて、暗くて。
ああ、これ、血じゃんか。
私刺されたんだ…。

「レティ…!?お前…!」

ああ、バカだ。
こんなことになるんなら、渋らないでいつだってすぐにお茶を入れて、将軍をこれでもかってぐらい気遣えばよかった。
どうせこの日常はずっと続くんだって甘えてきて。
だってそうでしょ?
続くから日常なんだもん。
剣が引き抜かれて、倒れる。
その使い物にならない身体をジェルド将軍が抱きかかえてくれた。

「レティ…身代わりなど…!馬鹿者が!!」
「たまたま、身代わりに、なっちゃった、ん、ですってば。
私は、そんなにできた部下じゃ、ない、から」
「馬鹿者…!俺は使えぬ部下ならばとっくに首を落としていたぞ!
王都まで連れてなど来なかったぞ!」

もう、ジェルド将軍。
敵が目の前にいるのに、私なんか抱きかかえてる場合じゃないよ。
だけどそのぬくもりを、手放したくなくて鎧に手を置く。

「そっか、使えない部下ってわけでも、なかったんですね、へへ。
とりあえず、アルダーと待ってますんで、上で」
「アルダーまでも…」
「だから、そんな顔、しないで。
帝国軍人の名が、泣きますよ。
やることやったら、またお茶を…のみ、ま……」
「レティ!レティ…!」

もしまた貴方と出会えるなら、今度はね、今度はもっといい部下になるから。

貴方に苦労かけないし、貴方の役にたつし、貴方を悲しい顔にさせたりなんかしない。

だから。

 
 もし、生まれ変わったら




あとがき
え、見方になることもない一部の敵将軍ですけど何か←
初見からかっこいいなーとは思ってたけどラストのほうでさらにほれた。
私はですね、敵キャラにほれやすいのです。まぁFEの敵キャラは悪人じじい面ばかりなのでめったにないけど…結果死ぬとわかっていても切なかったです。
次は救済夢書こう!
帝国軍人魂万歳!!

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