IF長編

□7 私との…約束だ…
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7 私との…約束だ… 

まっくらだった。
何もないところに一人で居る、たぶんこれは夢だ。
そこにはいろいろな私が居た。
いろんな装備の私が。ダーク・ブラッドの私だったり、パラディンの私だったり、メイドの私だったり。
すべての自分に見覚えがあった。
不思議なことに、今ならどの兵種でも戦える気がする。
そのいろいろな自分の周りには、家族が居た。マークス兄さんだったり、リョウマ兄さんだったり。
時々きょうだいたちの結婚相手もいるけれど、どの私にも結婚相手は居ない。ただ一人の私を除いて。

その私は、ブレイブヒーローで、そして隣にはハロルドが居た。

たくさんの、私。
だけどどの私も、今の自分とは違う気がする。
いろいろな光景が見えた。
白夜を選んだ私は、ガロン王を倒したり、途中で倒れたり、マークス兄さんを殺したことが苦しくて自殺したり。
暗夜を選んだ私は、リョウマ兄さんに切腹の道を進ませてしまい、平和の後も悩み続けたり、やっぱり途中で死んだり。
どっちみち、私は後悔しかできなかったようだ。
いろいろな私は、みんな不幸な顔をしてこちらをみていた。

その先へ進む。
そこには、私とまったく同じ顔の私がいた。
服装は違うけれどこれこそが紛れなく私だ。
その私は、銅像のように立ち尽くしていた。
まるで魂が抜けたみたいに。
その先には、三つの道が並んでいるけれど、銅像みたいな私はその前に立ち尽くして、すべてを放棄したみたいな顔で立っていた。
急に怖くなって後ろに下がった。
いろんな私が泣いて、私を見ている。
私はこの光景を、知っている。

何度も、何度も繰り返して、失敗して。
いろいろな兵種になったりしていろいろ試しても、双方が幸せになれる道を探すことができなくて、私はすべてを放棄した。

思い出した。
今度こそって、生まれ変わった私はくじけたんだ。
生き返ると、以前の記憶は消えてしまう。私は死ぬたびすべてを思い出した。きっと覚えていなくても、私の心は前世を引きずっていたんだ。
つらくて。
あの橋で、ギュンターさんがガンズさんに落とされた後、私は暗闇に身を投じたんだ。
そこまでで、すべての記憶は遮断された。
私は、もうひとつの現実世界へ逃避した。

――君は、苦しい道を進んできた。
だけど、大丈夫!必ずどこかに道はあるさ

「ハロルド…?」

――カムイ、お願いだ、私を忘れないでくれ。
生まれ変わっても、私と出会うと約束してほしい

あたりを見回すと、泣き崩れる私たちのうちの一人が、倒れこんでいた。
たったひとり結婚相手が居る私だ。
ハロルドが、私を抱えながら涙声で言った。
あれが、私の前世なんだ。
そして私は生まれ変わった後、この世界を捨てたんだ。
大事な約束を、忘れて。

「ごめんね、ハロルド…!」


**


「カムイ、カムイ!」
「――ハロルド…!?」

朝日だ。まぶしい朝日に、金色が輝いている。青い世界。

「カムイ、どうしたんだね。私の名前を呼んではうなされていたのだが…」
「ハロルド!」
「おわぁ!」

あ、私が飛びついたせいで、ハロルドは頭を打ちつけたみたいだ。
だけどそんなことよりも、私は言わなくちゃいけないことがあった。

「ごめん、ごめんね」
「あ、頭ならば大丈夫…」
「そうじゃなくて! 
ねぇハロルド、思い出してほしい」
「?」
「ハロルド」

困惑状態のハロルドを一度放して、その大きな手を持って目を覗き込む。
私はやっぱり、このぬくもりを知っていた。

「生まれ変わっても、私と出会う約束を、しよう?」
「――!」

青い目は、大きく開かれた。



まだまだ続くのだよ

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