アカネイアall

□アストリア
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「ふぁぁあああカイン殿!カイン殿助けてくださいぃぃぃい!」
「なっ、なんだクリス! どうしたんだ!」
「いま、鬼が私を追いかけてくるのです。ああ!忘れもしないあの恐怖!カイン殿と大橋で再会してから何度追いかけられらことでしょう!」
「?」
「アストリア殿ですよ!」
「なんだお前、アストリア殿を怒らせたのか!?」
「怒らせてないですあっちが勝手に怒ったんですぅ!」
「そんなわけがあるか、きちんと謝ってきなさい」
「なんでこんなときばっか先輩風吹かせるんですか!」
「なにおう!お前というヤツは…!」
「はぁ、はぁ、やっと追いついたぞクリス!」
「っわーキター!」

鬼の面相のアストリア殿の視線から逃れるようにカイン殿の背中に隠れる。
が、視線は鋭さを増したように思う。
あああなんで怒ってるんだろうあの人!
私はさっき訓練場ですこし仮眠をとっていたのだ。
だけど何か視線を感じておきてみればアストリア殿のあの表情!理不尽すぎるから!

「ひぃぃっ、なんなのもう!」
「アリティアのカイン殿、貴殿の後輩騎士を今しばらくお借りしたい」
「ああ、いいだろう。後輩の無礼、私がわびよう。さぁクリスをもっていけ」
「カイン殿のひとでなしーーっ!」

そして私は連行されました。
しばらく恐怖で足がすくんでいたけれど、いざ連れ出されてみるとアストリア殿は怒っているというか、ちょっと寂しそうな顔をしていることに気がついた。
これは…心当たりになくとも、やはり何かしてしまったのだろうか…。

「あの、」
「なぁ。やはりオレが怖いか」
「え」

人気のない廊下で、手を引かれたまま立ち止まった。

「先刻、お前はうなされていた。そしてオレの名を呼んで唸ったんだ」
「え…えぇえええ!」

い、言われてみれば何かに追いかけられる夢だったような…どうやら私は、仲間になった今でもアストリア殿に追いかけられたことを心のそこから恐ろしく思っていたようだ。
だって、そりゃあ…

「まぁ、怖いに決まってますわ」
「え」
「だってせっかく先輩と再開したかと思えば追いかけてくるし、また砂漠で足が取られるときにも追いかけてくるし、恐怖です!」
「ご、ごめん…」
「でもそれは、敵だったアストリア殿の話でして、みかたになったアストリア殿のことはたしかにまだビビってはいるけど、言うほど怖くないです。
だから傷つけたなら…すみません」

無意識に人を傷つけるって、怖いんだね。
ごめんねアストリア殿。

「そうか、確かに君が怖がるのも納得だ」
「え?」
「じゃあ、これからはオレと仲良くしてほしい。
一緒に訓練に付き合ってくれないか」
「そ、そんなことでよければよろこんで!」

よかった、と少し微笑むアストリア殿に赤面したのは、内緒だ。


 もう、仲間だから


こわいよね、アストリアが追いかけてくる恐怖(笑

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