アカネイアall

□リカード
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小さいころから体が弱くて、外の世界を知らないままに生きてきた。
いつもお屋敷のベッドの上から、窓の外を眺めて、本を読んで、時々お庭を散歩したり。
なれっこだから退屈ではないけど、でも外の世界にはあこがれてしまう。
無理して父様と母様を心配させるわけにもいかないし。

だけど最近、ちょっとした楽しみがある。
最初は偶然かと思った。
だけど、時々私の部屋の窓のふちに外の世界のものが置かれるようになったのだ。
それは貝殻だったり、うちの庭にはない草や花だったり、鳥の羽だったり、きれいな色をした石だったり色々だ。

あるとき気が付いたけれど、それは決まってうちに泥棒が入った日に置かれている。
金庫の中が荒らされたって母様が言う日には必ず置かれているし、みんなが盗まれたって気が付かない日にも置かれている。
私は告げ口なんてしなかった。
どういうわけかわからないけれど、その泥棒さんがこうして外の世界を見せてくれることが、少しうれしかったから。
そして今日は、なんと外の世界のものが置かれる瞬間を見てしまったのだ。
何気なく窓の外を見ていたら、にゅっと手が伸びてきて、そっと巻貝を置いたのだ。
私は思わず言っていた。

「ねぇ!泥棒さん!」

手はあわてて引っ込んでいったから、私もあわてて言った。

「ねぇ、捕まえないから待って!」

そしたら今度はぴょこっと青い髪の毛が見えて、そして同い年くらいの男の子が姿を現した。
あんまりあどけない顔だから、泥棒さんには見えなかった。

「…おいらに何か?」
「うん。いつもありがとう」

男の子はちょっと驚いたような顔をしてから、照れ笑いを浮かべた。

「私クリスよ」
「おいらはリカードだよ。
でもあんた変わってるな。
自分ちのお宝盗まれてるのに、おいらを捕まえないなんて」
「あなたも変わってるわ。
いつもいろいろおいて行ってくれて」
「あんたがいつも退屈そうに外みてるからさ」
「うん、だからありがとう。
何かお返しできないかしら。
あなたが持っていくお金は両親のものだし、自分で言うのもなんだけどうちにはお金がたくさんあるから、そうではなくて私が何かあげられたらいいのだけど…」

あいにく、本ばかりで。
胸のブローチとかどうかな。
一応、お金にはなると思うけど…。
ブローチをとろうとしたら、リカードは身振りでそれを止めた。

「いいんだ!いつかおいらがヘマこいたとき逃がしてくれる約束してくれれば」
「名案ねリカード。じゃあそれと、次は何か食べ物とか、お茶を出すわね」
「へぇ、そりゃいいや。盗みに入った家でおやつをごちそうになれるなんてさ!」

私たちは声を上げて笑った。
外で母様が「誰か一緒なの?」と呼びかけてくる。私たちはあわてて口を押えた。
リカードは手を振って、あっという間に姿を消した。
母様が部屋に入ってくる。

「なぁに?一人で大笑いしたの?」
「夢で面白い人にあったのよ。
それで、つい笑ってしまったの」

母様は不思議な顔で私を見ていた。


 次に会う時は


あとがき
リカードまじかわいい本当まじかわいいかわいいかわいい←

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