アカネイアall

□ナバール
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*従軍中ではないけれど、時代指定はないです。
一応レナさんを逃がす前設定ではありますが、あとは適当です


アジトの近くにある土手。
あそこはいい風が吹き、背の高い草が揺れる音と小川の流れる音が心地よい場所だ。
ナバールのお気に入りの場所である。
誰も知らないその場所に、気疲れするたび訪れていた。

けれどあるとき、ナバールは一人ではなくなった。
少女が現れるようになったのだ。はじめは目障りだった。
けれど彼女の愁いを帯びたような切ない歌声はナバールを虜にした。
以来、彼は彼女の歌を聴くため決まった時間に土手を訪れていた。
気配を消しているので、おそらく彼女はきがついていないだろうが。

 そんなある日、ナバールはへとへとになって土手にやってきていた。
アジトでいろいろとごたごたがあったのだ。
一応収拾を付けてきたものの、まわりは依然騒がしく寝つけもしない。
そこで何日も徹夜をした彼が訪れたのがこの土手だった。
いつもより時間ははやかったが、少女は果たしてそこにいた。

ナバールは気配を消すこともどうでもよくなって土手に寝転んだ。
その手には剣をにぎりしめて。
誰かが近づけばこの剣を鞘から抜き取り、敵の首に充てるだろう。
傭兵としての長年のくせだ。
そういうわけでナバールは警戒もなく、彼女の子守唄に流され眠りについた。

 目を覚ますと、夕方だった。
長い髪をかきあげて起き上がる。
ずいぶんと眠ってしまったようだ。当然少女はもういない。
上半身を起こしたナバールはそのまま座り、夕日を眺めていた。
ふと、視界の端で白いものがちらつくのが分かった。
なんだろうか。
視線を移すと、腹の上に白いバラが置かれていた。
ナバールの赤い服に映える白バラは、この辺りには咲かないものだ。
誰かが恋的に置いたとしか思えない――しかし、自分は起きなかった。
気配を完全に消したか、あるいは相手を信用している場合でなければ起こりえないことだ。
だが、そうそう気配を完全に消すことはできない。
アジトには気を許せる相手もいない。
となると、ナバールには一人の人物しか浮かばなかった。

「…あんたは俺にいつから気が付いていたのだ」

わからないが、次合う時に聞いてみようか。
彼女はまた、決まった時間に歌いに来るはずだ。
その時には、今度はこちらから赤いバラを贈ってみようと思う。


 白バラの少女


あとがき
夢ってかんじじゃないなぁ

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