アカネイアall

□ハーディン
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「いらっしゃい」

オレルアンの乾燥地帯に、一軒の酒場がある。クリスはいつものように旅人を迎えるため、グラスを磨いていた。
そういえば、癖でいらっしゃいと声をかけたはいいが、まだ開店時間には早い。
顔を上げると、そこには見知った顔の男がいた。

「まだ開店前ですよ」
「任務の前にそなたの顔を拝みに来ただけだ」

男――ハーディンは肩をすくめて見せながら言い、カウンター席に腰かけた。

「最近は顔も見せてくれなくて、ずいぶんとお忙しそうでしたのに。
任務前に油をうっていて大丈夫なの?」
「ここが集合場所だから、問題ないだろう」

それは都合のいい話ね、と返しながらも、クリスはうれしそうにはにかんだ。
本当ならば、一番良い酒を出してもてなしたいところだがあいにく任務前にそんなことはできない。
まさかとは思うが酔ったハーディンがなにか失態をおこしてはたまったものじゃない。

「できれば、任務の後にゆっくり寄ってほしいですね」
「任務後にはいろいろとやらねばならんことがあるのでな」
「でも、今日はあなたの騎士団だけでしょう?あなたのほかには少年たちだけ」
「そうだな」
「だったらオレルアン城に帰るまで、誰も任務が終わったなんて気づかない。
気づかなければ報告書をちょっとばかりさぼっても誰も気が付かない。
そうでしょ?」

ハーディンは頬杖をついて、笑った。

「っはは、私は面倒な女に捕まったらしいな。しかも逃れられそうにない」
「わかってくれたならいいわ!」

昼間の酒場に入り込む光が、二人の影を一つに移した。


 ともに過ごす時間



あとがき
ハーディン殿もニーナ様一筋ってかんじだから難しかったです

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