アカネイアall

□オグマ
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 血なまぐさい闘技場から抜け出し、タリスで姫君につかえるようになってはや半年。
幼いころから野蛮な男たちと生活してきたオグマにとって姫の近衛兵的役割を任されるようになり、なれるのにだいぶ時間がかかったが、この頃はすっかり敬語だとか、マナーについては慣れてきている。
だがそんな彼にも、未だよくわからないものがある。
クリスだ。
彼女はシーダ姫の世話係であり、友人にも近いような少女で、オグマよりいくつか歳下である。
彼女だけは、いつまでたってもオグマへの警戒を解かないでいた。
しかも姫の前でだけはみじんもそんな様子を見せないのがまた腹立たしい。
オグマは剣闘士の出であるから、確かに当初は周りの騎士たちから怪しまれてきた。
だが姫の擁護と、彼自身の勤勉さとが、周囲に彼を認めさせるにいたった。
それでもオグマは、まだ自分を信用しない人間がいてもおかしくないと考えている。
だがいくらなんでも、あからさますぎないか。

「クリス」
「っあらオグマ!それは姫の部屋のお花ね!わかったわ取り替えておくわ!」
「あ、ああ……」

姫への届け物を受け取るときもほとんど奪いようにして持っていく。

「クリス、向こうの女中が――」
「すっすぐ向かうわ!」

人に呼ばれていることを伝えても最後まで言い切る前に走って行ってしまう。
食事の場でたまたま正面に居合わせてもお互い無言、むしろクリスはさっさと食べ終えて姫の前だと言うのに先に席を外す無礼ぶり。

「いったいなにが問題なのだろうか…」

いくらオグマと言えど、正直へこむ。
やはりともに姫の身を守るものとして、もう少しうまくやっていけないだろうかと言うのが本音だ。
自分のことを苦手に思っていても、姫に不安を抱かせないように、姫の前ではそんな様子を見せない。
腹立たしいが、その気持ちはよく分かる。
自分だってそうだ。外で戦う自分と、姫の相談を受けているときとではまるで人が変わってしまう。
きっと彼女と自分は、似ているのだ。
オグマは外の階段に腰かけ、大剣を磨きながら考えた。

「ねぇ、ちょっと」

仕事だろうか。本当に珍しいことに、例の少女が後ろから声をかけてきた。

「どうした」
「別に…どうもしないけど」

オグマは驚いて振り向いた。
何もないのに、この少女から話しかけてくるだなんて。#
#NAME1##は、きまり悪そうにわずかに赤面していた。

「なんか、あんたが落ち込んでるみたいに見えただけ」
「落ち込んではいないが…」
「なによ。あんたの元気がないと、シーダ様が心配なさるのよ。
落ち込んでないならもっとしゃきっとなさい!」

背中を伸ばせと言うのだろうか。
だが、大剣を磨くのにはこの姿勢が一番楽なのだが…

「ふっ、お前はシーダ様がお好きなんだな」
「あ、あたりまえでしょ!あんたは違うわけ?」
「いや、俺にとっても姫は大事な主君だ」
「あ、あたりまえよ!」

ふん、とクリスはそっぽを向いてしまう。オグマは苦笑気味に打ち明けた。

「ただ、俺たちは二人とも姫に仕える身なんだ。
もう少しうまくやっていけないかと考えていた。
俺は別に人との戯れを好かんが、だがこのままそっけない会話ばかりしていたら、いずれ姫の前でもボロが出る。
まだ何か俺を疑っているか。そうであれば、その原因から見直していこう」

彼女は、背けた顔をばっとオグマに戻し、顔を真っ赤にした。
それは怒りと羞恥と、両方を含んでいた。

「こっの!鈍感男!疑ってないわよ最初っから!
あなたは姫が連れてきた人だもの!」
「ど、鈍感…?それはいったいどういうことだ」
「鈍感ったら鈍感なの!
ちょっと心配した私がバカだった!じゃあね!」

一人残されたオグマは、首をかしげた。


 照れてうまく話せなかったなんて、言えるわけないわ!



あとがき
あっれー、オグマ隊長好きなんだけど、連載とかぶらない内容にしようとおもったらなんか微妙になった…ごめん隊長!←

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