アカネイアall

□カイン
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今、猛烈に腹立たしい。

「カイン先輩って〜槍がお上手なんですねぇ!」
「いや、いや。こんな程度すごいうちには入らない」

ばーか、新米のぶりっこ騎士め。
カインは槍が苦手なんだっつの!
しかも謙遜しつつカインはちょっとだけ照れている。ほんと腹立つ。

「クリス、顔こわいよ」
「あったりまえよ!」
「まぁ、あの新米女性からの人気は低いよね」

私はカインよりみっつ年上だ。
先日やってきたあの新米騎士とは五才差になる。
あのこは、女の子全開で顔もかわいい。
たいして私は五歳上のおばさんで、女らしさもない。
苛々の裏には、カインがあのこに乗り換えちゃうんじゃないかって不安がある。

「カインくんは、一途な人だと思うからそんな顔しないで」
「わかってる…分かっていてなお不安になるのが乙女ってもんでしょう!」
「あんたも乙女だったのね」

ため息交じりに少し離れたところで指導中のカインをもう一度チラ見。
私たちは目があって、カインは手を振った。あれ。なんでこっちくるの。

「ほらすごく笑顔だよ。まぁうまくやりな」
「えぇえ!まってよぅ!」

なんてやつだ。同期はさっさと行ってしまった。

「クリス!」
「おはよーカイン。今日も後輩指導に熱心だね」
「そうだ、その話なんだ!
俺がどうにも指導者に向いていないようでな…あの新米に槍を教えてやってくれないか?お前は槍が得意だろう?」
「…いいけど」

まぁ、ここで断るのも変な話だし。
明らかに嫌そうな顔の新米に、とりあえず手槍を使ってみてよ、と言う。
彼女は的に向かって槍を投げた。
そこでちょっと修正を入れれば、すぐにうまくなった。
本当にそれは、不自然なくらいすぐに。

「さすがクリスだ!しかし俺が言ったことと大差ないのに、どうしてうまく伝わっていないのだろうか…」

うん、まぁだいたいわかったわ。
この女…手ぇ抜いてやがったな。

「新米よ」
「…なんですか」
「こうみえてカインはいそがしいわけよ。
教官として、そしてそれ以上に仕事もあるわけ。
カインのこと想うならできることを出来ないふりして時間裂かせないでくれるかな。そ
れにうまく教えられてなかったって勘違いしたままだと、こいつマジでへこむから。
わ・た・し・の・カインは真面目なんで、その真面目さを利用するのはやめていただきたいねぇ、切実に」

彼女はとたんに顔を真っ赤にして、無言で走って行ってしまった。あとにはすっきりした私と、唖然としているカインが残された。

「…そんなわけなので、カイン。あなたの教え方は悪くないよ。あの女が悪いだけだから」
「あ、ああ…今のうちに本性が分かって良かったよ。アリティア騎士としてふさわしいように根性からたたきなおさねば、だな!」
「…本当に真面目よね」
「しかし言い過ぎではないか?
恨まれて嫌がらせでもされたらどうするのだ」

本当に心配そうな顔をするから、さっきまで不安だったのがバカみたいになっちゃった。

「ふふっ…もう!この色男めが!」
「おわぁ!何をする!」
「そんなところが大好きなんだけどねっ!」
「そ、そうか?それは…どうも?」

もうちょっと向こうで、アベルが白けた顔でこっちをみているなんて、私は気が付かない。

 
 まっすぐな君が
 

あとがき
たまには年上ヒロインで行こうかと思ってやってみました。なかなか行けるね、年上でも。
カイン殿大好きだよーちゅっちゅっちゅ←

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