アカネイアall

□ジェイガン
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「戻ったぞ」
「お帰りなさい」

ちょうど夕飯を並べたところだ。
久々に我が家に旦那が帰宅した。
この時期は新米騎士たちの育成のため、いつも忙しいジェイガンはさらに忙しい。
顔を見るのも一週間ぶり。

「お疲れ様でした。はい、マントを預かりましょう。肩当ても、はい」

旦那の鎧を外すこともなじんだ作業。もう30年間繰り返してきたことだから。

「すまないな、なかなか帰れずに」
「いいえ、お勤めご苦労様です。お忙しかったでしょう。
ちょうど夕食もできたので、お座りになってくださいな」

鎧を外し終えた彼は、深いため息とともに椅子に腰かけた。
ずいぶんとお疲れようだ。
それからお茶を一杯、お酒を飲む勢いで飲み干した。

「茶一杯とっても、やはりお前が作るものはうまいよ」
「あら、とつぜんどうなさったの」「とにかく、疲れた」

私も向かいの席に腰かけて、料理を皿に取り分けて彼の前に置く。
彼はそれに手を付けながら、出来損ないの新米騎士たちのことを話し出す。
罵っているけれど、私から見れば息子を語る父親のような目だわ。
私たちの間には子供がいないから、そんな彼の表情はやはり新鮮に感じる。

「カインやアベルが新米だったころが懐かしいわ!あやつらのほうが幾分もましだった」
「まぁ、当時も散々な言いようだったではないですか。でも、二人ともいまや立派な騎士ですね。若いころのあなたにそっくり」

ちゃかすようにいえば、ジェイガンは心外だと言わんばかりに顔を横にふる。

「そっくりなものかね!そりゃあ、私も未熟ではあったがあれと比べられては困る」
「ふふふっ、そうですね」

夕食は全てジェイガンが平らげた。
私はお皿をもって流しへ向かう。
すべての皿を片付け終わり、振り向くと珍しいことに彼はまだ椅子に腰かけていた。

「クリス」「
なんですか?」
「今年も忙しくなりそうだが、今まで通りよろしく頼む」

――忙しいのに、ちゃんと覚えていてくださったんですね。
今日が結婚記念日だってこと。そ
んな律儀なところは、若いところから変わらない。

差し出された花束を受け取って、「こちらこそ」と返せば、彼は微笑んだ。


 これからもともに


あとがき
それこそジェイガン様の夢を書く日が来るなんて夢にもおもわなかったな!笑

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