覚醒all

□レンハ
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「ああああの!レンハ殿!折り入って頼みがございます!」

「なんと、ルフレ殿から頼み事とは珍しいこともあるものだ」

レンハは、細い目を驚いたように少しだけ開いて言った。

目の前の少女は恥ずかしそうに視線を下げた。

「レンハ殿は、いつも瞑想をしていらっしゃるんですよね」

「ああ、よく瞑想という言葉をしっていたな」

「はい、私ソンシンの国については昔から興味がありまして。

それでその、もしよろしかったら私に瞑想を教えていただけませんか?」

なるほど、それで。とレンハは思った。

ルフレは自分のことを殿を付けて呼んだり、食事の時もソンシンという異国の自分にも食べやすいよう気を遣ってくれていた。

それはつまりソンシンの暮らしについて多少なりとも知識が有ると言うことで、彼女はもっとソンシンについて知りたいようだった。

「瞑想とは、なかなか理解のおよぶものではない。

習得には時間がかかるであろうが集中力を高めるには良い訓練になる。

私でよければお手伝いさせていただこう」

「あ、ありがとうございます!」

レンハの言ったとおり、初めのうちは目を閉じてじっとしているだけだった。

たったそれだけでも初心者のルフレには難しく、無心になろうとすればするほど無心には慣れないものであると知った。

だが毎日空き時間などに練習をしていればだんだんと集中が出来るようになってきた。レンハもそんなルフレのことを気に入ってソンシンについて色々と教えてくれた。

そうして訓練をしているうちに、季節は巡り夏となった。

「あー、あついです」

「む、そうか?」

「え、レンハさん大丈夫なんですか!?」

いつも瞑想している部屋に二人で座っているとルフレはそれだけでも汗がにじむのを感じた。

「私は、暑さには強い。それに瞑想を使って体に涼しいと思いこませることも出来なくはない。

ルフレ殿も今日はそれをためしてみてはどうだ」

「うーん、うまく行けばいいですけど…とりあえずやってみますね」

「あなたならばそのくらいは上手くいくと思うが…あなたの集中力はなかなかのものだと思うがな」

「えへへ、そう言っていただけると嬉しいです」

ルフレの照れ笑いに、レンハも思わず赤面した。レンハはその思いを振り切るようにいつにもまさって集中した。

その集中が途切れたのは、どさっと何かが倒れる音がしたときだった。

「ルフレ殿…?」

なんだ、瞑想中に眠ってしまったのか。

レンハは半分笑いながらルフレをのぞきこみ、それから顔色を変えて彼女を抱えて走り出した。


***


「あれ…ここは…」

「あ、ルフレさん起きた?」

「リズ?」

目を覚ますと、そこは病室で上からリズがのぞき込んできた。

ルフレはよく分からなくて辺りをきょろきょろと見回した。

「レンハさんなら今水をくみに行ってくれたよ」

「ええ、いやそうではなくて…」

「もう!ルフレさん頑張るのも良いけど体調管理もしっかりしてよね!」

「え…?」

「熱中症で倒れたんだよ!あんなあわてたレンハさんはじめてみちゃった!」

「ねっ…熱中症!?」

「ルフレ殿!」

病室に飛び込んできたレンハとルフレは同時に叫んでいた。

レンハは水の入った桶を置くとまっすぐにルフレの方にきて、がばっと頭を下げた。

「すまなかった!」

「え、えぇえ!?レンハさんが謝ることなんて…それよりお辞儀綺麗ですね。

さすがソンシンのお方です」

「そ、それどころではない!

私が至らなかったばかりにルフレ殿を危険な目に…」

レンハは頭を上げたものの、申し訳なさそうにうつむいてしまった。

「そんな大げさな!むしろなんで倒れるまで気が付かなかったのかな。私馬鹿みたいです」

確かにちょっと暑かったけど気が付かなかったとルフレは反省した。

そんな ルフレにレンハは首を横に振って見せた。

「いいや、熱中症に気が付かぬほど集中していたルフレ殿にはとても素質を感じた」

「本当ですか?じゃあ、今度から気をつけますからまた一緒に瞑想してくださいね?」

「もちろん!」

そこでレンハの顔に笑顔が戻ってきた。

部屋の隅で二人を眺めていたリズは「ほどほどにね」と苦笑いしながら言った。


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