覚醒all

□ヴァルハルト
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「ヴァ…ヴァルハルトさん!」

「…?」

「お、お願いがあります」

「我は今やこの軍に属する一兵士にすぎぬ。そう畏まるな」

「それは無理です!でも、無理なんですけど今頑張ってあなたに話しかけています」

廊下で巨体を見つけて、いつもお願いしたかったことを思い切って言ってみようと思って声をかけたのは良いけれど、緊張してしまって変なことまで口走ってしまう。

だけど…今を逃したら次はないかもしれない…

「実は――」


***


「――して、これが我の鎧であるが…」

「で、でかい!あ、いや大きいですね!感激です!」

そう、お願いしたかったことというのはヴァルハルトさんの鎧を磨かせて貰いたいということだ。

実は…その、前からずっとヴァルハルトさんに興味があって。

そしたら鎧も気になってきちゃって。

「これがいつも、ヴァルハルトさんをまもっているんですね!磨き方は普通の鎧と同じなんですか?」

「うむ。しかしうぬも物好きよ。我の鎧を磨きたいなどと…」

「あ、迷惑でした…か…?」

「そうではなく、物珍しいと思ったまでだ」

しかしこりゃあ大きいなぁ…。

実にやりがいがある!

私ははりきって作業に取りかかった。

最初は隣にいるヴァルハルトさんに恐縮してしまって変なことを口走ったりしたけれど、話してみればこの人は思ったよりずっと優しい人だった。

それに重くて鎧がうまく持ち上がらないと、無言で持ち上げてくれるし。

私は不器用なので、全部終わる頃には2時間くらいたってしまっていた。

「終わった!ごめんなさいいっぱい時間使ってしまって」

「いや、ここまで綺麗になったのを見るのは久々よ。礼を言うぞ」

「そそそそんな!むしろ本当にありがとうございます!」

「たしか…この前貰った菓子があったな。それを出そう。

飲み物を持ってくるからすこし待っておれ」

「え、わ、私行きますよ!」

「うぬは休んでおれ」

止めるまもなく、ヴァルハルトさんは行ってしまった。

手持ち無沙汰になった私はあらためて部屋を見回してみた。

クロムさんの配慮でヴァルハルトさんのお部屋は大きい。

椅子やテーブルも大きい。

あ、ベットの大きさもすごい!

まぁ、さすがに男性のベッドに勝手に上がったりはしないけれど、よりかかっていたらなんとなく眠くなってきてしまった。

あ、やばい今一瞬意識とんだんだけど…でもヴァルハルトさんが帰るまでは――


***


ヴァルハルトが部屋に戻ると、ルフレはベッドに寄りかかってうつむいていた。

そっと近づくと彼女は寝息をたてていた。

まさか自分の部屋で眠りこける女が居るとは。

ヴァルハルトは驚きを含んだ笑みを浮かべ、ルフレをそっと持ち上げベッドにおろすと布団をかけてやった。

大きなベッドで小さな少女が体を丸めているのはなんだかおかしな光景だとヴァルハルトには思われた。

「うぬは不思議な女よ」

ヴァルハルトは、今度は鎧を磨いてほしいと頼んでみるのも良いかも知れないと考えながら、自分もベッドに寄りかかった。


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