覚醒all

□ギャンレル
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 なんで、ギャンレルさんはいつもひどいこと言うのかな。

ブスだとか、ドジだとか、頭悪いとか。

人が気にしているところをずばっと付いてきて皮肉な笑みを浮かべながら嫌味を言ってくる。

私のことが嫌いなのかな。

でも、本当に嫌いなら話しかけては来ないと思うし…これはこれで彼なりの会話なのかもしれないし。

「どうおもいますか」

「…そんな面倒なことを俺に聞くのかい」

「はい!グレゴさんも立派なおじさんなので、やっぱり人生経験豊富な方に聞くのが一番かと」

「お前さん俺を馬鹿にしてんのか、敬ってんのか」

「どっちもです。でもほら、私がグレゴさんをおちょくっても楽しい会話ができるじゃないですか。

ギャンレルさんもそういうノリなのかなぁって。

ただあの人いちいち痛いところをついてくるのでいまいち自信がもてなくて…」

「なるほどねぃ」

あれも厄介な男だとグレゴさんはため息をついた。

「あいつはなぁ、相当嫌いか、あるいは気になっているやつにしかちょっかいはださねぇ。

つまりお前さんはそのどっちかってことだ」

「え、じゃあもし前者だったら…」

「そりゃあ無いとおもうがねぇ。あれだ!

好きな女ほどいじめたくなるってやつだよ。俺も若いときなんてな〜」

「あ、グレゴさんの話はいいです」

「てめぇ…」

結局よく分からないまま、私はグレゴさんの元を後にした。

今日はお昼は食堂でパンを貰って外で食べることにしよ。

この時期は風が気持ち良いから外で食べるのは好きだ。

そして、たいていこういうときにギャンレルさんがつっかかってくる。

今日は、うまく嫌味をかわしてしゃべれるといいけれど…

「よぅルフレ、今日もぼっちか」

「っギャンレルさん!てかあなたに言われたくありません」

「あ?今日も相変わらずの不細工じゃねぇか。そんなんじゃ一生独り身だぜ」

「う、うるさいですっ」

「だいたいこんな昼間から女が一人なんざ、人生おわったな」

あ、だめだ。その顔。

この人は人を欺くことに慣れている。

次々繰り出される言葉に本気にしちゃだめだと背を向けるけど、それがきにくわないらしくてギャンレルさんはもっともっと酷いことを言う。

あれ、私やっぱり嫌われてるのかな。

「お?泣くか?もっと不細工になっちまうなぁ〜困ったもんだぜ」

「っもう、私のこと…嫌いならそうと言ってください!」

もう嫌だ!みともなく涙が流れてきちゃって恥ずかしい。

確かにそうだ、私の顔は不細工だ。

結構気にしているのにまさかギャンレルさんに泣かされるなんて思っていなかった。

ギャンレルさんもなんか黙り込んでしまって、気まずくなっちゃって。

「早く、嫌いだと言ってくださいっ…ひぐっ…もう最悪…っ…」

「お、お前なぁ…本当に泣くこたぁねぇだろ」

「あなたが、泣かしたんじゃっ、ないですかっ…」

ギャンレルさんは困ったようにあたまをガシガシかいて、唸った。

なんだ、泣くくらいで黙ってくれるなら最初からそうすれば良かった。

「あー…こんな予定じゃなかった」

「なんですか、それ」

「俺は確かに人を泣かせたり怒らせんのが好きだが――お前が泣いても怒っても、全然たのしくねぇ」

「それは、私に無関心ということですか」

「ちげぇよ、逆だ逆。悪かったよ」

な、なんだよもう!

今度はさっきとは打って変わって背中をいたわるようにさすられた。

ギャンレルさんがどうしたいのか、私にはよくわからないよ。

「もうお前に悪態つくのはやめる」

「なんですか急に」

「不細工だっての嘘だ。な、悪かたって」

「いまさらなんですか、もぅ」

わかんないけど、だけどギャンレルさんが優しくしてくれるのはなんか嬉しかったから、彼の不器用さに免じて今回のことは水に流してあげても良いと思う。


 不器用な君




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