覚醒all

□ブレディ
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視界がぼやけて、暖かい涙が頬を流れていった。

こんなことで泣いてしまう自分がもっと嫌で、もっと涙が出てきちゃう。

なんて矛盾しているのだろうか。

また、大事な場面で矢を外してしまった。

ここぞと言うところで、私はいつも攻撃を外して他の誰かに負担をかけてしまう。

人一倍訓練している自信はあるし、的にもきちんと刺さるのに。

なのに実戦になるとうまくいかなくて。

「お、おい」
「ふぁ?」

涙をぬぐおうとしたら、急に視界が真っ暗になった。

「手でこすったら赤くなっちまうだろうがっ!」

ああ、これタオルか。それにこの声は…

「ブレディ?」
「おう」

わぁ、みっともないところみられちゃった。

顔に熱が集まってくるのを感じる。

ブレディは無言で私の隣に腰掛けて、頭を慣れない手つきでなでてくれた。

私が恥ずかしがっていること分かって顔を背けるけど、けど泣いている人のことを放っておけないんだろうな。

そんなブレディは不器用で、でも優しい。

「その、あれだ。なんかあったのか」

「ううん…また、失敗しちゃって」

「そうか」

「頑張っても、頑張っても、うまくいかなくて、それで――」

「…そうか」

そりゃあ、辛ぇよなって、ブレディは何度もよしよししてくれて、もっと涙が出てきちゃう。


「けどあんたは強ぇよ」

「弱いよ」

「ルフレは僧侶やってる俺なんかよりずっと度胸がある」

「でもブレディは最近魔法だってやってるし、最前列でも活躍してるでしょ」

「そうだけどよ…」

「ブレディは、すごいや。私もみならわなくちゃだ、ね」

ずずっとかわいくない音で鼻をすすった。

そしたら、またずずっと鼻をすする音が聞こえた。

今のは私じゃないよ?タオルを避けて顔を上げたら、ブレディも泣いていた。

「ブレディ…なんで泣いて」

「うっ、うるせぇ!泣いてなんかいねぇよ!」
「わぁっ」

ぐっと頭を押さえ込まれて、でも相変わらずブレディの鼻をすする音が聞こえてくる。

「もしかして、つられ泣きね」

「だから泣いてねぇつってんだろ!おいお前の涙が止まったらすぐに訓練やるぞ!異論はみとめぇねぇ!」

同じ泣き虫なのに、ブレディはもっとずっとたくましく見えた。

私も、もうちょっと頑張ってみようかな。

「ありがとっ…」



 もらい泣きする優しい君




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