覚醒all

□ウード
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「ふっ…貴様が噂の黒騎士か。

良いだろう、私の技を食らうが良い。

これが古来より伝わりし魔道の技――サンダークリティカりゅ…ああもう!

また噛んじゃった!あり得ないわ大事な場面なのに!」

人混みに疲れて街をはずれた野原に向かっていたウードは、そんな声を聞いた。

どこかの子供がお遊びでもしているらしい。

いや、それにしては大人びた美しい声だが、いったい誰の声だろうか。

ウードはその声が廃墟の向こうから聞こえてくるので、そっと足を進めた。

ぜひとも、素敵なセリフをはいたその人物をお目にかかりたいと思った。ただそれだけだった。

もう一度セリフを言い直してはくれないだろうか。

いや、むしろ自分から仕掛けてみるのもいいな。
ウードはそわそわした。

そうして廃墟に近づくと、彼はすっと影から姿を現した。

「貴様――見かけぬ顔だな。ここで何をしておる。ここはアレクサンドレス様の統治なさるお国であるぞ。怪しき者であれば、俺のこの聖剣サンダースピリットソードで成敗してくれる!」

「ふっ…貴様が噂の黒騎士か。良いだろう。私の技を食らうが良い。これが古来より伝わりし魔道の技――サンダークリティカルショットだ!」

驚くことに、そこにいたのはウードと大して歳の変わらぬ少女だった。

彼女は左足を引き、まるで神に捧げるように腕を掲げ、その場でくるりと一回転しファイアーを踊らせた。

そして最後に掛け声と共に腕をウードの方へ突き出した。

もちろん、ファイアーは軽く空気を舞うだけでウードに向けて魔法など出ていないのだが、ウードは「ぐぁあああ!」っと声を上げその場に転がった。

しばし、沈黙が続いた。
ウードが体を起こすと少女はハッとした表情になり、ひどく赤面した。

「あっ、ああああああの」

「ふっ…良いセリフだったぜ」

先刻までの真剣な表情はどこかへとんでいってしまった。少女は大あわてでウードの方に駆け寄ってきた。

「ご、ごめんなさいお怪我は…!?ファイアー飛び散っちゃいましたか?!」

「い、いや、何も飛んでないが…」

「よ、よかったぁ〜!あなたのうめき声がリアルすぎて一瞬私が本当にやっちゃったのかと…」

「悪役をやるときには正義の味方が良い気分のほうがいいだろうからうめき声も磨いたんだ」

「まぁ!あなたには弟さんが?」

「いや?これは俺が好きでやってるだけなんだ。同い年かな?あんたみたいな人に巡り会えて俺は今幸せだ!よろしければお名前を、怪しき者よ」

「ふふっ、私はルフレよ。そなたの名は?黒騎士よ」

「ふっ、俺はウードだ」

ウードが起きあがり、二人は握手を交わした。

そのとき、ちょうど街から鐘の音が聞こえてきた。それは昼を知らせる鐘の音だった。

「大変!もう帰らなくては」

「そうか。それは残念だな。もっと技名だとか、かっこいいセリフについて語りたかったが…」

「ウード殿、この世界の空はどこをとっても必ず繋がっているのです。

私と貴方の巡り会った運命はこの空の元でかわされ、そして再びそのときが訪れるでしょう…」

ルフレは静かにそう言ってから、少し照れくさそうに笑みを浮かべて走り去っていった。

その後ろ姿を、ウードが熱のこもった目で見つめていることに彼女はまだ気が付かない。



 お前のファイアーが俺の胸を射抜いた




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