覚醒all

□ドニ
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最近、妙になついてくる奴がいる。

「ルフレさん!今日も…今日も綺麗だべ!」

「うっさいわよ!」

そう、こいつ。

小さくてダサいくるくる頭で、もっとダサいことに鍋を被り、さらにダサいことに田舎口調。
それが最近軍の中でも優秀な兵士として名前が上がるようになってきたドニだ。

「ちょ、何顔赤らめてるのよ」

「いい声だべ」

「あんたねぇ…私はあんたを罵ったのよ?頭大丈夫?」

「心配してるれるべか?!」

「誰かシスターを呼んで!」

あ、むこうで兵士たちがこっちみてる。いつまでもこんな田舎男といたら私の輝きが失われちゃうわ!

「もぅ私いくからねか。追いかけてこないでよね」

「そ、そんなぁ!俺はお昼ご飯を誘いにきたんだべ」

「いやよ!もぅ鬱陶しいわね!もう一度鏡をよく見ることね!」

私は颯爽とその場を去った。

本当は、ドニって優しくていいこなんだって、私は知っている。

でもだったらなおさら私なんかに引っかかったらダメなの。

こんな見た目にばかり気を使って意地みたいなプライドはった女より、お似合いのこがいるはず。

食堂にはドニがいなくなったのを見計らってから行こう。

そう思って「みんなの部屋」で待機でもしようと中に入った。

お昼時はみんな食堂にいるみたいで珍しく誰もいなかった。

誰もいないけれど…外から気配を感じる。

「そこにいるのは誰かしら」

まさかドニではないわよね。

だってドニはこんなに隠すような気配じゃないから。なんだかこの気配はいやらしく感じられた。

でてきたのは先刻私をみていた兵士たちだった。

「ようルフレ」

「何か用かしら」

なに呼び捨てにしてんのよ。私はあんたの顔すら見覚えがないってのに。

「ここ、人いねぇなぁ?」

「お昼だからね」

「今から俺たちとちょーっと遊ばねぇかい」
「おあいにく様、間に合ってますけど」

昼間からタチ悪いわね…まぁ、力ではかなわないかもしれないけれど技術なら私のほうが上だから、私は対して慌てなかった。

「つれないこと言うなよ」

「あなたごときが私に相手してほしいだなんて、馬鹿馬鹿しい。もう一度鏡をよく見なさい」

「こっ、こいつ…!」

切れやすいのもザコの特徴よ。

部屋に立てかけられていた物干し竿(なんでここにあるのかしら…)を手に取る。

だけど飛びかかってくる男は、私が物干し竿を振る前にもう倒れていた。

倒れた男の前には見覚えのある鍋が転がっていた。

「やめるべ!」

「あんた…」

部屋の入り口に立っていたドニは、見たことがないくらい怒った顔をしていた。

それからまだ倒れていない残りの男をあっという間に気絶させてしまった。

私は驚いてそれを見ていた。

ドニはただの村人だったはずなのに、全くそうは見えなかった。

次にドニは私を少し怒ったような目でみて近づいてきた。

「なんで自分で倒そうとしただべか!」

「え…でも私あいつらより強いし…」

「それでも!万が一ってことがあるべ!」

「…な、なによ!自分でも私は美人だって自覚あるわ!
その上でもっとめかして一人でいて襲われたら、それは私のせいなんだし自業自得!
貴方に心配される筋合いなんて…」

「大有りだべ!」

え…

「俺は、ルフレさんのいいところいっぱい知ってるんだべ。
いつも華やかだけども本当は細かいところに目を配って、誰も気がつかないようなことを正してくれているのを俺はいつもみているんだべ!」

「…ドニ」

「それに女の子は綺麗になりたくて普通だと思うべ!俺はそんなあんたが好きだから、危ない目にあって欲しくないんだべ…」

こんな風に。こんな風に言われたのは初めてで。

だっていつだってみんなうわべだけでのつきあいだけで…ドニ。
あんたはやっぱり、良いヤツ…ううん、いい男なんだね。

「…あんたお昼は食べたの?」

「こいつらが怪しい動きをしてて、つけてきたからまだだ!」

「そっか…うん、そっか」

まだ、私なんかがこの男に愛されていいのかはわかんないけど、まぁこれくらいだったら許されるかな?

「ご飯行きましょう」

「ほ、本当だべか!」

「きょっ、今日だけだからね!」


 身の程知らずは思い違い





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