覚醒all

□リベラ
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街を歩いていると、男性に絡まれた。

もう、最悪。

こんな天気の良い日にこんな変な人につかまちゃうなんてさ。

「ねぇちゃん、ちょっとそこらで俺とあそばねぇ?」

「あの、結構です。私もっと気品のある人が好きなんで、お兄さんみたいなチャラい人は生理的にちょっと…」

「っけ、けっこう言うじゃねぇか。まぁそのかわいさに免じて許してやるよ」

「…おぇ」

マジで勘弁なんだけど。あーあ、ちょうど良く自衛団の人とかいないかなぁ。だれか助けてくれないかなぁ。

「無理に誘っても、人の心までは得られませんよ」

と、思っていた矢先。男の背後から誰かがそう言うのが聞こえた。

男が驚いたように振り向く。綺麗な人…一瞬女性かとおもったけれど、その人は男性だった。

「あ?あんだ、あんたもずいぶん綺麗な顔してんじゃねぇか。
あんたが俺とつきあってくれるんならあっちの彼女のことは諦めてやってもいいぜ?」

「…やだあなた、綺麗なら男でも女でもいいタチだったのね。ますますきもい」

「はぁ?男!?」

「すみません…私は男です。では私はこれからジョゼフィーヌと約束があるので」

そういって、彼は私の方へ来て私の手を取った。

「いきましょうジョゼフィーヌ」

「じょぜっ――ええ!いきましょうジョン!」

どうやら彼は私の連れのフリをして男から離れてくれるらしかった。

ジョンなんて顔つきじゃないけれど、彼のことをそう呼びながら私たちは人混みに紛れていった。

「あの、たすかりましたジョン」

「いえ…それと、私はジョンではなくてリベラと申します」

「なら私もジョゼフィーヌではなくてルフレといいます」

「ルフレさんですか。これからはああいう男には気をつけてくださいね。私も欲絡まれますので」

彼は笑みを浮かべてそう言った。

その顔があまりに綺麗なので、思わず握られていた手を握り返してしまった。

それを隠すように私は言った。

「ジョンはおきれいですからね」

「私は男なのですが…ジョンでもありませんし。そういえばあなたは私が男だと気が付いてくださいましたね。

ありがとうございます。滅多にないことなのでうれしかったですよ」

頬を染める姿も、女の私以上に女っぽくて…だけどどこか、なんだか男らしさって言うか、男性の魅力みたいなものを感じた。

「不思議ですね。あなたはとても綺麗なのに、どこか男を感じます」

「男ですからね」

「いや、まぁそうなんですけど…そうだ。

さっき私がナンパされていたところなのにおかしな話ですけど、私にナンパされてくれませんか」

冗談交じりにそう言ったら、彼はすこし面食らった表情を浮かべてから「おもしろい提案ですね」と言った。

「本気にしてませんね。でもどうですかジョン。助けていただいたお礼もかねてお茶の一杯」

「そうですね、あなたがきちんと名前で呼んで誘ってくださればお答えできますけど」

いらずらっぽく笑った彼に「じゃあ、リベラさん」と言い直すと、なんでしょうかと柔らかい笑みで答えてくれた。


 ジョゼフィーヌとジョン




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