覚醒all

□クロム
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がしゃん!ばきばき!

嫌な音がした。訓練の帰り道。

自分の部屋に戻ろうと歩いていると、その方向から嫌な音がした。

なんだろうかと走って様子を見に行くと、私の部屋の扉は粉砕されていた。

…なぜだ。

なぜ粉砕されている。

「ルフレ…」

見るも無惨なことになった扉の前には、剣を片手にうろたえるクロム様が居た。

「…どういうことでしょうかこれは」

「い、いやぁ…」

「クロム様…」

「す、すまん!決して故意的ではなくてだな…」

「いくらクロム様と言えど許せませぬ!きちんとなおしていただきますよ!」

「…ああ、すまない」

クロム様はしょんぼりした犬みたいにそういった。

私の部屋は一般兵の中でも一番端だ。

訓練場はすぐ間近にあり、クロム様も訓練の最中なにやら、やらかしてしまったに違いない。

けど、だからといって私は容赦しない。

私と同じように音を聞いて走ってきたフレデリクさんは「私がやりましょう」といったけれど、負けない!

「いいですかフレデリクさんこれはクロム様がやらかしたことです、なので私はなんとしてでもクロム様にやっていただきますからね」

私の剣幕にビビったらしく、フレデリクさんはそっと去っていった。

「ではさっさとやりますよクロム様!」

「ああ」

――本当は、怒こっているわけじゃあない。

むしろ朝から晩まで訓練していたクロム様は偉いと思うし(もうすこし書類なんかもこなしていただけるとフレデリクさんも助かるのだろうけれど)、私も見習うべきだと思う。

それに、ちょっぴりラッキーだ、なんて。

私のような一般兵がこうしてクロム様と二人きりで居られる事ってあまりない。

「そういえばルフレ、最近腕をあげたか?」

不意にクロム様がそう言うので、私は作業の手を止めて彼を見た。

「そう…でしょうか…」

「今日ソールとサシで勝負していたのを見てな。そう感じたんだ」

「く、クロム様にそう言っていただけて光栄ですが、あまり実感が…」

「なら、明日は俺と勝負をしようか。

そうすればすぐに分かる」

そうすればすぐに分かるって…以前一度だけ勝負していただいたときのこと、覚えていらっしゃるのかな…?

「よし、これで完成だ」

ちょっと感激していたら、扉は元の通りになおってしまった。

思ったより短時間で済んでしまったな…

「ルフレ、すまなかったな」

「あ、いえ。むしろやらせてしまってすみません」

「ははっ、何を今更。そうだ、よければこれから一緒に夕食でもどうだ。

城下町に良い店があってな。今日の詫びを入れるよ」

「え、あ、本当ですか!?」

あ、なんだか私の運がのってきたみたいだ。

今日はたくさん夕食食べて、明日はクロム様に良いところ見せないと!

「ただの口実にすぎないけれど、な…」

「何かいいました?」

「いや、なんでもない」



 君と居る口実





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