背中合わせのあなたと私
□第5話
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ブー、ブー。
ん? ……白いほうか。
「はい」
「あっ、雨霧先生、今どちらにいらっしゃいますか? 原稿を受け取りにご自宅に伺ったら留守だったので」
あー、そういえば今日来るって言ってたな。
「申し訳ありません、私情でちょっと外に出てまして。済み次第そちらにお届けするということでもよろしいでしょうか?」
「わかりました。お待ちしております。それでは、失礼します」
「はい」
電話を切り、変装をして原稿を届けに編集社へ行った。
「すみません、原稿をお持ちしました」
「あっ! 雨霧先生、わざわざすみません」
「いえ、こちらのミスですので」
「では、お預かりします」
「お願いします」
さて、家に帰って寝よう。
ブー、ブー。
今度は誰だよ。
ポケットに手を突っ込み、振動している物を手に取った。
……黒か。
「はい」
「仕事だ」
……ジンか。
「日時と場所、内容は?」
「今夜21時。場所はいつものところだ。内容は暗殺。ターゲットは、ネズミだ」
ネズミ? ……あー、どっかのスパイね。
「ジンが呼び出すんでしょ?」
「ああ。お前は時間通りにそこに行き、いつも通りに殺ればいい」
「はいはい。終わったら報告するわ。じゃあね」
一方的に電話を切り、あくびをしながら家に帰った。
「んっ……」
目を開ければもう日は沈んでおり、辺りは闇に染まっていた。
今は……。
「20時……」
もう行かなきゃ。
全身を黒で包み、必要な物を持ってバイクを走らせた。