背中合わせのあなたと私
□第4話
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「なあ灰原、ベルモットと一緒にいたもう1人の奴は誰なんだよ」
「コードネームはロゼ。ここしばらくはアメリカにいたの。彼女はまさに天才。暗殺者としても、研究者としても、とても優秀よ」
「研究者としても?」
「ええ。彼女も研究してたから。あの薬の」
「……っ! じゃあ……」
「まさか、薬の情報を聞き出そうと思ってるの?」
「ああ。それができなかったとしても、奴は灰原をかばったんだ。仲間になってくれる可能性は十分にある」
甘いな。
「それはないな」
「……っ!?」
「ロゼ!」
「どうしててめえがここにいる!」
すごい警戒心だ。
「仲間にする気がある奴にそんなピリピリするなよ。まっ、そのくらい警戒するのは正解だけど」
「ロゼ、あなた……」
「どうしてここを知ってるのかって? 日本に来てすぐに調べたからさ。さすがにベルモットが相手となると自分で止めに行かないと志保死んじゃうし。まっ、立派な騎士がいるみたいだから、少しは安心だけど。ねっ? 工藤新一君」
「……っ!」
「そんなに驚く必要はないと思うけどな。志保が幼児化しており、行くところがなかった彼女がここにいる時点で行方不明となっている工藤新一が幼児化していると考えてもおかしくはない。現に君が探偵事務所に来た時期と工藤新一が行方をくらませた時期は同じだし」
「……組織に報告するのか?」
「報告? はははっ、面白いことを言うね。そんなことしても私には有利にならない。それに、そんなことしたらベルモットに怒られて、今度こそ志保を殺されかねない。それに組織に君のことがバレれば、志保の命も危険にさらされる。そんなこと、私がするわけないでしょ。……まっ、ここで私が君を殺せば、なんの問題もないんだけどね」
彼に銃を突きつけた。
「やめて!」
志保が彼をかばうようにして彼の前に立った。
「彼を殺さないで!」
「大丈夫だよ。彼は殺さない。ベルモットが志保を諦めたのは彼のおかげだし。それに、これには弾入ってないから」
こんなところで殺さないよ。それに、殺したらきっと、あなたは悲しむでしょ?
「今日はあなたにお礼を言いに来たの。ありがとう、志保を守ってくれて」
「……ああ」
「じゃあ私はもう行くわ。ばいばい」
「待って」
がしっと腕を掴まれた。
「どうしたの?」
「あなたにいくつか聞きたいことがあるの」
「何?」
「とにかく座って」
……逃げれそうにないな。
私は渋々ソファーに腰かけた。
「聞きたいことって、何?」
「私は、あなたのこと何も知らない。経歴も、本名も、なぜ組織にいるのかも。あなたは私たちと違って、両親が組織にいたとかじゃない。自分の意思で入ったんでしょ?」
「そんなこと知ってどうするの?」
「何も。ただ知りたいだけ」
「……そう。でも、それは内緒」
「ロゼ!」
「志保、あなたには幸せになってほしいの。だから、こんなこと、知らなくていいのよ。あなたはもう、組織を抜けたんだから」
そう言い、私はその場を去った。