過去と現実と未来と
□第4話
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はあー、今日は面倒な能力別クラスの時間がある。まあもちろん真面目に仕事なんてしないけど。ただ、逃げるのもなかなか面倒なんだよなあ。見つかったら余計こき使われるし。こういうところは昔も今も変わらない。
「海夜ー」
逃げようとしていると、蜜柑に声をかけられた。
「どうしたの? 佐倉さん」
「蜜柑でええよ。海夜はどこのクラスなん?」
うーん……隠してもいずれはバレるか。
「……危力系」
まあ行く気はないけどね。
「えー!? 海夜、全然危険やないやん! なんでー!?」
このアリスは危険だよ。とてもね。
「さあ? 学園側が勝手に決めたから。蜜柑はどこなの?」
そういえば私、この子のアリスをまだ知らない。
「特力や! ウチ、無効化のアリスやねん」
無効化……。
自然とあの人の顔が頭に浮かんだ。
そうか。あなたはちゃんと、彼女の中で生きているんですね。
「……そう。良いアリスを持ったね」
「えー? 全然良くないで? みんなみたいにわかりやすいアリスが良かった」
「蜜柑、一つ言っておくわ。そのアリスは大切な人を守れる、とても素晴らしいアリスよ。だから、自分のこともアリスのことも嫌いにならないでね」
「う、うん……」
「蜜柑、特力の場所はわかる?」
「それがわからへんねん」
「じゃあそこまで送ってあげる」
久しぶりに行ってみたい。あの懐かしい温かい場所に。
「ん? 海夜、場所わかるん?」
「うん。行こう」
特力の教室に向かっている途中、日向棗と会った。
ん? なんか焦ってる?
「棗」
近くでレイの声が聞こえた。
ああ、追われてるのか。
「……消えろ」
そう呟き、蜜柑と棗の気配を消した。
すると、レイは違う方向に歩いていった。
「海夜、何か言った?」
「言ってないよ。蜜柑、ここをまっすぐ行けば特力の教室に行けるから。私は用事ができちゃったから行くわ」
「そうなん? わかった。ありがとう、海夜」
蜜柑と別れ、レイの元へと向かう。
「ペルソナ」
「海夜か」
レイの瞳が私を捉える。
「誰か探してるの?」
「棗を見なかったか?」
「見てないけど……仕事?」
「ああ」
「私が代わりに行こうか?」
「いや、実力のわからないお前に任せるのは……」
「何言ってるの? 私に実力なんて関係ない。私が一言言うだけで、それは現実になる。大丈夫、絶対に失敗はしない」
任務に失敗は許されない。
「……わかった。来い」
私は再び闇へと堕ちる。
すみません、先輩。あなたが連れてきたこの場所には、もういられないみたいです。私は再び、元居た場所に戻ります。あなたはまだ、こちら側にいますか?