つながる想い
□第6話
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あー、いらいらする。
あれから何にも手をつける気になれず、私はベットで横になっていた。
「美優、俺だけど」
一也?
「入っていいよ」
むくっと起き上がり、そう返した。
「少しは落ち着いたか?」
そう言いながら水を渡してきた。
「どうも」
それをごくごくと飲んだ。
「まあ、お前が怒るのもわかるけどな。お前がキレてなかったら俺がキレてたし」
だろうね。
「あんたはいずれ彼とバッテリー組むんだから、あんま関係崩すなよ。お前は誰であろうとずばずば投手に意見言うけど、悪化すると試合の流れ悪くするし」
丹波さんみたいに。
「お前、あいつが1軍に入ると思ってんのか?」
うっ……。
「……思ってるよ。だから余計むかついた。あいつ嫌いだけど、実力は一応認めてる。あれはエースの器を持ってる。あれが成長できれば、青道はもっと強くなる」
「選手を見る目は確かだな、本当。ってかお前、まだあのこと気にしてんの? クリス先輩の怪我」
「私がもっと早く気づいてれば、あの人はもっと早く復帰できたかもしれない。スポーツトレーナーとか言って、全然周りが見えてなかった」
自分のことで精一杯だった。
「お前も入部したてだったからな。クリス先輩の怪我、もうほとんど治ってんだろ」
「たぶん。でも、もう1軍には行けない」
「確かにそうだけどさ、お前があのとき気づいたからクリス先輩は野球人生終わらずに済んだんだ。それはプラスに考えていいんじゃねえの?」
「うん」
終わったこといちいち考えても仕方ないしな。
「本当にお前、クリス先輩好きだよな」
「私に野球を教えてくれたのはあの人だから。向こうは覚えてないだろうけど」
小学生の頃だし。
「尊敬に値する人だもんな、あの人」
「うん」
あっ、もうそろそろ食事作んないと。
「今日はありがとう。助かった」
「それはこっちの台詞。まあでも、お前は1人で抱え込みすぎるから、たまには吐き出せよ。俺はいつでも話聞くから」
「うん」
「あー、あとスコアブック。俺もう少し見たいから、使い終わったらまた貸してくれ」
「わかった。ごめん、気遣わせて」
「いいよ。そんじゃあな」
一也は部屋から出ていった。
食事が終わったら、スコアをパソコンに打ち込もう。
スコアブックを机の上に置き、食堂に向かった。