真と偽り

□第9話
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「書類を届けに行ってきます」

「ああ」

 えーっと……今日は五番隊と三番隊か。行きたくないけど、しかたないか。これも仕事だし。大丈夫、ばれない。今までだってばれずにやってきてるんだ、大丈夫。

「失礼します。十番隊の月宮です。書類を届けに参りました」

「あっ! 月宮三席」

 雛森副隊長がこちらに駆け寄ってきた。

「こんにちは、雛森副隊長。藍染隊長はいらっしゃいますか?」

「ええ、隊首室のほうに。どうぞ、入って」

 ちっ、いるのかよ。

「ありがとうございます」

 雛森副隊長にぺこりと頭を下げ、隊首室に向かった。

 コンコンコン

「十番隊の月宮です。書類をお届けに参りました」

「どうぞ」

「失礼します」

 扉を開けてそう言い、一礼したあと中に入った。

「やあ月宮くん、こんにちは」

「お疲れ様です、藍染隊長」

 あー、殺気が出そうになる。

「書類、そこに置いておいてもらえるかな?」

「はい」

 指示されたところに書類を置いた。

「では、私はこれで失礼します」

「まあまあ、そう焦らないで。お茶でも飲んでいきなよ」

 長居したくないんだよ。

「いえ、私は……」

「いいからいいから」

 無理やりソファーに座らされてしまった。

 ちっ……。

「はい、どうぞ」

 それから少しして、藍染隊長がお茶を持ってきた。

「ありがとうございます」

 まっ、飲む気はさらさらないけどな。

「月宮くん、君に聞きたいことがあるんだ」

 聞きたいこと?

「なんでしょうか?」

「月白凜華」

 ……っ!

「だよね? 君」

 どうして気づかれた!?

「誰ですか? その月白凜華というのは」

 ここは知らないふりをしよう。こいつにばれるのは一番避けたい。

「約100年前まで二番隊第三席を務めていた女性だよ。元十二番隊隊長、浦原喜助と肩を並べるほどの実力だったとか」

 喜助さんと肩を並べるほどの実力はないと思うけど。

「浦原喜助さんですか。確か技術開発局の設立者ですよね? そんな方と肩を並べるほどの実力者とは、すごい人なんですね。そんなに私と似ているのですか? 同一人物だと錯覚するほどに」

 騙し通せ。

「容姿は君とは全く違いますよ。当時の彼女は髪も短く、落ち着きという言葉は似合わないとても好戦的な人でした。今の君とは大違いですね」

 折れる気はないか。

「ではなぜ私がその人と同一人物だと?」

「霊圧や君が持つその斬魄刀。それらはまさに月白凜華と同じ。もう1つの斬魄刀は彼女の妹、月白華凜の物」

 ピクッ。

 ほおー、よくもそんな平然とあの子の名が出せたものだな。

「それ以外に共通する点はないのですか」

「うーん、そうだねえ……。戦闘時には残酷に、敵には一切の手加減なし。冷静沈着で表情をあまり表に出さない、この辺は共通していると思うよ」

 昔はもっと表情に出ていたと思うが。

「そうですか。ですが残念なことに、私は月白凜華ではありません。私からも1つお尋ねいたします。なぜ私の斬魄刀が月白凜華、月白華凜だと思ったのか、その判断理由をお聞かせ願いたい」

 始解さえしなければこれが霖雨と氷雨だとは判断できないはずだ。

「先日、日番谷隊長、松本副隊長の前で始解したのを偶々目撃したんだよ」

 ……っ! 馬鹿な。霊圧は感じなかったぞ。

「そうですか。全く気づきませんでした」

「こちらも霊圧を消すのは得意なのでね」

 甘かったか。

「まさか隊長になっているとは思いませんでした。居心地がいいですか? 隊長の椅子は」

 元々はあいつが座っていた椅子。

「ああ、とても」

 やっぱりこいつはむかつく。

「そうですか。あのことを知っている私を、消しますか?」

 その前に私がお前を殺すが。

「そんなことはしないよ。それに君があのことについて総隊長に報告することはない」

 よくおわかりで。

「ええ。あなたは隊士たちから絶大な信頼を得ていますからね。そんなことをしても無駄だとわかっています。総隊長に報告したところで、証拠不十分で相手にはしてもらえないでしょう」

 そうでなければすぐに報告している。

「優秀で助かるよ」

「あなたを助ける気はありません。では、私はこれで失礼します。まだ仕事がありますので」

「随分と冷静だね」

 冷静? そんなことあるわけないだろ。

「ええ。あなたは無駄に頭が回りますからね。遅かれ早かればれるとは思っていました。予想通りです」

 もうちょっと騙せると思ってたよ。

「そうかい。じゃあまたね、月宮くん」

「ええ、また」

 そう言い、私はそこから出た。

「ちっ……」

 予想以上に早くばれた。もうちょっと準備をしておきたたかったが、そうもいかないらしい。さて、これからどうするか……。
 

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