真と偽り

□第5話
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「月宮、今回は参加してもらうからな」

「えっ……」

 今日は十番隊が定期的に行う訓練日。隊員全員参加の模擬戦だ。

「嫌です」

 ――でも私はそれを守っていない。今まで参加したのは2〜3回ほどなのだ。

「だめだ。今回お前が参加しないと奇数になっちまうんだよ」

 対戦相手はくじ引きで平等に決めることになっている。

「……わかりました」

 はあー、嫌だなあ。

 重い足取りで修練所に向かった。

「今日は参加されるんですね」

 くじ引きの結果、相手は四席になった。

 面倒なのが相手じゃん。

「はい。隊長がどうしてもと言うので」

 出たくて出てるわけじゃないんだよ。

「今日こそあなたを倒す」

 できるものならどうぞ。

「始め!」

 副隊長の合図で試合が始まった。

 向こうは抜刀し始解まで済ませているが、私は抜刀すらしていない。

「どこからでもどうぞ」

「馬鹿にするなー!」

 頭に血が登りすぎ。

 彼が斬りかかってきたが、それを容易に避けた。

「もうちょっと冷静になってください」

 思いっきり蹴り飛ばした。

「そんなんで私に勝つ? ふざけんな。三席なめてんじゃねえよ」

 彼にしか聞こえない声量で、そう冷たく言い放った。

 こっちだって三席という立場上、ちゃんと責任もってやってるんだよ。

「ま、まだ……だ……」

 まだやる気か。

「そのやる気だけは評価しますよ」

 素早く彼の後ろに回り込んだ。

「そこまで!」

 手刀で終わらせようと思ったが、副隊長が試合終了の合図を出した。

 ちっ……。

 素早く手を引っ込め、何事もなかったかのようにその場を去った。
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