白と黒の世界
□第二夜
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意識を取り戻した頃、ノアはすでにいなくなっていた。
逃げられたか。邪魔しやがって。……まあいい。向こうが狙っている以上、またすぐ会えるだろう。
「さて、行くか」
タイムリミットは迫ってる。それまでに、できる限りのことをしよう。私が私でいられる間にーー。
「見つけたぞ」
……っ!
頭上から、とても懐かしい声が聞こえた。
ふと上を見上げれば、そこには月夜に照らされた黒髪をなびかせる、懐かしい顔があった。
「久しぶり、ユウ」
「なんで1人でこんなところにいんだよ」
「元帥としての任務を遂行させるためだけど?」
「今どういう状況なのか知ってんだろ? エクソシストが各元帥の護衛として各地に飛んでる。見つけ次第本部へ帰還させることになってる。お前も早く本部に……」
「断る」
「ふざけんな。お前は狙われてんだぞ」
「わかってるよ、そんなこと。狙われてるってことはアクマがいっぱい集まるってこと。つまり、アクマを解放する機会が増える。その機会をみすみす逃すようなことはしない。それに、狙われてるのはユウたちだって同じ」
「お前なあ……」
「神田、落ち着け」
マリがなだめに入った。
「マリも久しぶりだね」
「ああ」
「本部に戻るとしても、目的を果たしてからじゃないと絶対に戻らない。これだけは譲らないから。ユウたちも、早くティエドール元帥を探しに行きなよ」
「なぜ我々がティエドール元帥を探していると?」
「だってユウ、いつも以上に機嫌悪いし、マリも一緒だし。どうせコムイのことだから、各元帥の弟子たちを向かわせてるんでしょう? きっと私を探してるのはクロス部隊。クロスの手がかり持ってそうだってことでね」
「(当たってる……)」
「その顔は当たりか。コムイの考えることはわかりやすいから。それじゃあ私はもう行くわ。またね、2人とも」
「おいっ! 待て!」
そこから颯爽と私は姿を消した。
ごめんね、ユウ。でも私は、まだ戻るわけにはいかないんだ。ユウ、死なないでね。