白と黒の世界

□第二夜
2ページ/2ページ

意識を取り戻した頃、ノアはすでにいなくなっていた。

逃げられたか。邪魔しやがって。……まあいい。向こうが狙っている以上、またすぐ会えるだろう。

「さて、行くか」

タイムリミットは迫ってる。それまでに、できる限りのことをしよう。私が私でいられる間にーー。

「見つけたぞ」

……っ!

頭上から、とても懐かしい声が聞こえた。

ふと上を見上げれば、そこには月夜に照らされた黒髪をなびかせる、懐かしい顔があった。

「久しぶり、ユウ」

「なんで1人でこんなところにいんだよ」

「元帥としての任務を遂行させるためだけど?」

「今どういう状況なのか知ってんだろ? エクソシストが各元帥の護衛として各地に飛んでる。見つけ次第本部へ帰還させることになってる。お前も早く本部に……」

「断る」

「ふざけんな。お前は狙われてんだぞ」

「わかってるよ、そんなこと。狙われてるってことはアクマがいっぱい集まるってこと。つまり、アクマを解放する機会が増える。その機会をみすみす逃すようなことはしない。それに、狙われてるのはユウたちだって同じ」

「お前なあ……」

「神田、落ち着け」

マリがなだめに入った。

「マリも久しぶりだね」

「ああ」

「本部に戻るとしても、目的を果たしてからじゃないと絶対に戻らない。これだけは譲らないから。ユウたちも、早くティエドール元帥を探しに行きなよ」

「なぜ我々がティエドール元帥を探していると?」

「だってユウ、いつも以上に機嫌悪いし、マリも一緒だし。どうせコムイのことだから、各元帥の弟子たちを向かわせてるんでしょう? きっと私を探してるのはクロス部隊。クロスの手がかり持ってそうだってことでね」

「(当たってる……)」

「その顔は当たりか。コムイの考えることはわかりやすいから。それじゃあ私はもう行くわ。またね、2人とも」

「おいっ! 待て!」

そこから颯爽と私は姿を消した。

ごめんね、ユウ。でも私は、まだ戻るわけにはいかないんだ。ユウ、死なないでね。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ