★竜神の巫女

□第三章 山紫水明
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☆過去

俺の体は変らしい。
小さいころ、先祖がえり御用達の病院で精密検査をした時の話だった。
父親が深刻な顔をしている。
母親に至っては泣いて崩れている。

俺の体には両親の血が流れている。
父のほうには妖怪の血が混じっている。
一方母親のほうには巫女の一族で巫女の血が混じっている。
それぞれの血が混じるはずなのに分担を分けてまで左右別々に流れている。
今でも俺の体の中心でそれぞれの血は攻防を繰り広げている。

だからたぶん炎属性は父さんの血から。

水属性は母さんの血から。

この本来交わることのない二人が交わり、相対する存在が結ばれた結果がこの俺なのだ。
この業界でも異例中の異例。
その日、母さんは俺が寝てからずっと泣きながら謝っていた。

――

『ごめんね陽ちゃん。ごめんね。』
『水葉。初めからわかっていたことだろう。』
『和幸さん。この子だけは普通の人生を歩ませてあげたかったのに……』
『これも神様の思し召しだろ。大丈夫だ。俺たちの子だろう。たくさんの苦労もするが、その分たくさんの幸せに恵まれる。』
『……そうだったわ。私たちの子だもの。』
『だからこそ名に呪(しゅ)までかけたんだろ。』

陽(ひ)のように暖かく、心の強い兵(つわもの)となるように、と。

――

だから少しでも普通の暮らしを。と今の今まで俺は中学まで普通の学校に通っていた。
高校をここにしたのは体が成長していくにつれ力も成長していくから、力を抑制する術が意味をなさなくなったからだ。



「……はい。それは父さんと母さんのためにも。」

「このことは僕に任せて。そこの扉からでて。あぁ、この紙を担当の先生に見せるんだよ。」

紙には属性判断が書かれていた。
知識のない俺でもわかるのは属性が炎ってことと能力ランクが十段階の一ってことだけだった。
担当教師は……五十嵐那月……かぁ。


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