小説

SC L
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闇覆う街で現象解説を



一切の明かりが消えた街は、異様な不安感を駆られるほどに暗い。
感情が具現化されたような闇はどこか不気味な静けさを与えた。

橋より手前の住民や観光客の混乱を大方抑えたジャンとエルフィの2人は、
一旦遊撃士協会へと戻り、エルフィが把握していなかった
導力停止現象について説明をすることになった。

リベールでのクーデター事件よりも前に遡り、エステル達の元に
ゴスペルと呼ばれる黒いオーブメントが届くところから話が始まった。

オーブメントを調べてもらうためにツァイスに向かい、
ラッセル博士の元に訪れて調査が始まった・・・

そして調べていくうちにツァイスの街にある全ての導力が停止した。


「・・・それが導力停止現象」
「言葉のままだよ。 導力で動くものが全て止まった。
 明かりは勿論日常生活すらままならない、今みたいな状況だったそうだ」
「それが今回国内全土で? 通信機器も死んでるのよね?」
「ツァイスの比じゃないよ・・あ〜っもうどうしたものか」


明かりのない室内でがしがしと頭を掻くジャンの姿を見つめる。
彼は夜目が利かないと言っていたからかどこか視線が合わない気がした。

エルフリーデは腕を組み、考え込んだ表情をする。
成程、異常事態。 クーデターなんて比じゃない。

調査のためにアイナ街道を駆け抜けていった記憶を呼び戻す。

魔獣除けだったオーブメントも切れているんだ。
正遊撃士ならともかく、準遊撃士には少々厳しい道になる気がする。

・・・人手が足りなくなりそうだな。


「紺碧の塔上ってきたって言ったじゃん」
「うん」
「あの後滝のある関所の方も寄ってきたのよね」
「アーツも使えないのにこの短時間で行動が早い・・」

「導力仕様の扉は開かないわ暖房機点かないわ、案の定機能せず潰れていた」


人がどれほどオーブメントに頼った生活をしていたのかがよく分かる。
全停止しているならば協会同士の連絡も取れやしない。

他の街はどうなっているのだろう。
やるべきことは山積みだが何を優先すべきか。

・・・ルーアンにはガラ悪いながら準遊撃士滞在してるな。
彼らの力が借りれるならば自分はもっと他のことに手回せそうだけど。


「他に何か気づいたこととかはもうない?」
「・・あー・・・リベール中央の・・大きな湖」
「ヴァレリア湖?」

「そう。 そこに船を2隻見た。
 多分片方がアルセイユ、片方が恐らく噂の結社の物だと思う」
「オーブメントが機能しなくなって着水したんだろうね」
「私もそう思う」


正直、懸念はあるけれど。

だって向こうは空に浮遊する物体がなにかも、
導力停止することも知った上であれを出現させたはずなんだ。

着水、したのまではいい。

停止したから船が動かない、そこで終わるとは到底思えない。
・・あの『蛇』がそんなヘマをするだろうか?

何かしらの手段を使って奴らはあの場所に向かう。 ・・・どうやって?

考えれば考えるほど疑問が尽きない。 弱った。

あの組織は何をどこまでやれるのだろう。
こんなことならもっと前から組織の情報調べとくんだった。


「ねぇ、エル」
「ん? うん」
「あの浮遊する物体、なんだと思う?」

「・・・なんだろうね・・? 人工物っぽいけど・・
 島くらいの大きさに見えるけどな」
「島、 島か・・・」
「でもあれが何かは、アルセイユに居た人達が教えてくれると思う、のよね」

「・・なんで?」
「根拠はない。 なんとなく」
「なんとなく・・いやまぁエルは野生の勘みたいなの強そうだけど・・」
「アレが何かとかこの角度からは分かんなくない?
 ガチで乗り込むかアレと近しい高度から見るしかなくない?」





(あーっもうほんとにこんなことなら昔っから調べときゃよかった!
 だってぶっちゃけ予定外だったんだもん今回のリベール行きはさぁ!!)
(荒れてるね・・)
(ごめんね、すぐ落ち着くから)

(・・・エルってなんでリベールに来たんだっけ?)
(カシウスさんに会ったら息子にヨシュアが居るって聞いたからだよ)
(ヨシュア君? あぁ、昔馴染みなんだっけ)
(そうね。 後は・・・レーヴェと会える気配がしたからかな)





 
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