小説

SC L
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アルセイユ搭乗最後尾



面々がアルセイユに乗り込むのを見ながら、
ほぼ最後尾をオリビエと共に乗り込んだ。

・・・ふと振り向いた時、いつのまに持っていたのやら
彼は片手に小さなトランクを提げていた。


「・・そのトランクは?」
「いやんっエル君そんなの聞いてどうすんのっ」

「気になるから開けていい?」
「エル君のえっち! んもーエル君ってばマイペースなんだからっ!」
「どの口が言う?」


彼の浮かれた口調に肩を上げて苦笑いを浮かべながら対応する。
オリビエは「はっはっは」と笑った後、トランクを少し掲げてみせた。


「着替えだよ。 ルーアンで君と会った時と同じ衣装」
「・・はーん、そのままでは堅苦しいからってことね」
「そういうこと」


頷くオリビエに納得した表情を見せる。

初搭乗となるアルセイユに乗り込んで辺りを見渡す。
・・・はー、こりゃ立派だわ。 流石王国軍の艦。

しばらくツァイス周辺で仕事していた時期があったけど、
中央工房が総力をあげて作ったって話だったもんなぁ。 そりゃ立派だわ。

指揮をしてるであろうユリア大尉が居る場所へと、
ぞろぞろ向かう遊撃士メンバーの後を自分も追い、かけようとした時。

下ろしていた右手にするりと何かが滑り込み、
そのまま手と一緒に腕がくい、と引っ張られて思わず顔を向けた。

オリビエ。

彼はトランクを手に持ったまま、唇に人差し指を当て、
「静かに」と言わんばかりのジェスチャーと共にウインクをした後、
すぐ手前にある扉を指した。

最後尾のやり取りなど露知らず、既に他のメンバーは先に行ってしまい
私達の先を歩いていた人の姿がもう早見えなくなっていた。

・・・思わず肩を下げて息を吐き出す。


「・・着替えるんじゃないの?」
「えっ何、エル君僕の着替え見たい!?」
「ばか、そっちじゃない」

「もー照れちゃって! 僕はいいんだよ、
 君に隠し事など最早何も無いんだからね・・!」
「分かった分かった」


そしてそのまま歩きだすオリビエと引かれていく右手を視界に収めて。

相変わらずだな、と浅い溜息を付いたのとほぼ同時に。
オリビエは肩越しに振り向いて紫がかったその目を細めた。


「少しだけ話がしたい」


思わずその場でしばらく瞬きを繰り返した。

・・・本題はこれか。
コイツこういうとこあるんだよなぁ・・急に温度差変わる時。

短く「ん」と呟けば彼は私の手を離し、指した扉へと入っていった。



(普段があーだから急に真面目になるの弱いんだよな・・参るな、)





 
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