小説

SC L
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軍勢撤退直後の新事実



帝国の軍勢が撤退し、ハーケン門の前に残されたオリビエとミュラー。

今回の件で起こしたことをそれぞれ話し合い、それが一区切り付いた瞬間、
オリビエの名を呼ぶ明るい声が2人の間を割って入った。

駆けつけてきたエステル筆頭遊撃士とクローゼの姿を視界に納めたオリビエ。


「やぁエステル君、ご苦労様だったねぇ」
「ご苦労様じゃないわよ!」


不服そうに口を尖らせるエステルの隣にまで、エルフィが歩いてきた。
ひらり、と掲げられた白い指先と手の平。


「や、2人ともお疲れさん」
「む」

「やーんマイスイーツハニー! 僕の迎えに来てくれたのかいっ♡」
「はっは、冗談を」
「いやんエル君キツい!! でもそんなエル君もス、キ。 きゃっ」
「はいはい、ありがと」


先程の交渉時、皇子らしい精悍とした態度は見る影もなく、
すっかりいつも通りなオリビエに冷ややかな視線を送るミュラー。

更には彼女の隣に立ってたエステルまでもが、
「この人エルさんに対してもこうなのか」と
言わんばかりの冷ややかな視線をオリビエに向けている。

重く溜息を1つ吐いた彼は、エルフィに視線を向けた。


「・・コイツのことはさておき、
 エルも慣れない土地での仕事は大変だったろう、お疲れ」
「はは、ありがとう。 そっちも付き合わされて大変だったね」
「全くだ・・・」


平然と話に加わるエルフィに、混乱しきった様子でエステルが口を挟む。


「ちょっ、ちょっちょ、エルさんも!?
 もう、一体何がどうなってるわけ!?」

「どうしたもこうしても、まあ、見た通りのまんまさ。
 帝国内で怪しげな陰謀が進行していたものだからね、
 ちょっと一芝居を打って出鼻を挫いてやったわけだ」
「一芝居って・・・あんたね」


敵を欺くには味方からと言うからねぇ、と頷きながら
今回の軍勢対処の一連を報告するオリビエ。

更にはカシウス・ブライトの名が挙がり、
エステルはとうとう諦めたかのように「や、やっぱり・・・」と口にした。


「え・・・ていうかエルさんも今回の件知ってたの?」
「ん? 知ってたっていうか、途中で気付いたよ。 オリビエ登場の辺りで」
「え、き、気付けるもんなの?」

「オリビエの素性知ってるし。 こんなこったろーと思ったわ」
「あっ、知っ・・・素性知ってたァ!?」


驚愕し声を荒げるエステルに、
エルフィは瞬きを繰り返しふ、と笑みを浮かべる。


「私は帝国で仕事してるのよ?」
「え、あぁ・・・そっか・・そんなもん・・・?」


納得したのか否か、悩ましい反応を残しながら彼女は更に溜息を付く。

初対面、剣帝の妹とのカミングアウト貰った時点で相当驚いたが、
彼女にはなんだかんだ毎回驚かされている気がする。

エルフィはエステルから視線を別のところに向け、
紫色の瞳をオリビエの方へと向ける。

エステルは彼女のその瞳の視線を追った。


「それに・・彼がただの酔狂ではないことも知ってるしね」
「・・・ただの酔狂じゃないんだ」
「ふふ、どうだろうね?」


はぐらかすような含み笑いを浮かべるオリビエ。
その返答にエステルは据わった目を向ける。


「この人普段の言動以上に食えないから覚えといて」
「りょ、了解」
「それはどういう意図の忠告だい?」





(エルフィもご無沙汰だな)
(久しぶりね、カシウスさん。 案の定の活躍ねぇ)
(・・!? ・・あっ、そっか。 帝国で・・・)
(そう。 ギルド襲撃事件の時に彼に手を借りたの。
 リベールにヨシュアが居ることも、その時彼の口から聞いたのよ)

(・・・その襲撃にも結社が関わっていて、
 だから、エルフィは・・リベールにまで?)
(まぁそう繋がるかな。 最初はレーヴェとの戦闘が目的だったけど、
 ・・こんな大事件、遊撃士として放っておけやしないしね)





 
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