小説

SC L
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既視感への答え合わせ



けたたましいまでの破壊音は、前触れもなく襲ってきた。
平穏だったそれは一瞬にしてその破壊音でもみ消され。

巨大なボースマーケットと同じ大きさほどの巨大な竜が、
建物の上に咆哮と共に構えていた。

古代竜の脇、建物の端に佇む青年は
遊撃士協会から出てきた者達を見下ろしている。

風に揺らいだアッシュブロンドと・・・深い紫色の瞳。
名乗る青年の姿を見つめながら彼は1人、納得したように目を伏せた。


「(嗚呼、成程。 これが容姿に対する既視感)」


確かにこれは、事前に聞いていなかったとしても想像が容易だったろう。
性別の違いこそあれど、あの髪色は珍しい。


「するとレーヴェっていうのは君の愛称だったわけだね」
「あ、あんですって〜!?」
「貴方がレーヴェ・・・」

「・・・いささか不本意だが仲間内でそう呼ぶ者は多いな。
 まぁお前達も好きなように呼ぶがいい」
「・・・なめやがって・・・」


レオンハルトと名乗った青年に対し、各々反応を示す中、
オリビエは脈絡もないであろう質問を、青年に投げかけた。


「エル君には会ったのかい?」
「・・・?」
「エル?」

「・・エルフリーデの知り合いか?」
「帝国で知り合った親しい友なのさ。
 しかし成程、そういうことならばいろいろと合点が行く」


頷くような仕草を見せるオリビエ。
レオンハルトは無表情に彼の姿を見つめた。


「彼女は君のためだけにこの国に来たと言っても過言ではないね?」
「・・・言われずとも知っている」


彼がそう言い終えるや否や、古代竜がボースの街へと火を吹きかける。

何かを呟いた矢先、レーヴェは古代竜へと飛び乗った。
引き止めようとアガットが声を投げるもそれ自体には然程反応も見せず。


「今回の実験は少しばかり変則的でな、正直お前達の手に負える事件ではない。
 王国軍にでも任せて大人しくしておくのだな」


巨大な翼を動かし、古代竜は飛び立つように思われたが、
その直前レーヴェは協会前に立つ彼女達に紛れる人物へと目を向け。


「・・エルフリーデを知る様子だが」
「?」
「・・・俺の記憶では無茶をする奴、だった。
 アレは早々死にやしないだろうが・・死なない程度に様子見てやってくれ」


それだけ告げると彼は古代竜ごと、空へ飛び立ってしまった。



(・・・・)
(・・ねぇ、オリビエ。 エルって・・誰?)
(ふふふ。 凄く素敵な我が友だよ。
 彼女もリベールに居るから、機会があれば近々会えるんじゃないかな)
(へぇ、彼女ってことは女性なの?)

(・・・エルフリーデ、ってまさか、)
(『双重』・・・か・・・?)





 
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