小説

SC L
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映える翡翠と初対面



「そういえば脇のお嬢さんは知らない子だな。
 クーデター事件に絡んでた子じゃないよね?」


室内の端の方に静かに立っていたオレンジ色の長い髪の女性へと
エルフリーデが視線を向ける。

女性は緑色の瞳でにこりと笑った後にお辞儀をした。
彼女のオレンジ色の長い髪から肩から滑り落ちる。


「初めまして、フィアナ・エグリシアと申します。
 エルさんの話は少しだけ伺っています」


温和に微笑まれた表情は優しげに、
彼女の瞳はそれは見事なエメラルドで思わず小さく息を呑む。


「・・・誰から? オリビエ?」
「ふふ、『剣帝』から」
「・・・! あん、た」

「わ、わー!! エルフリーデさん違うの!! 彼女は仲間なの!!」


慌てたように2人の間にエステルが割って入る。

エルフィの表情は微かに険しくなっていたものの、
彼女の「違う」という弁明に疑問符を浮かばせた。

エステルが掻い摘んで彼女の説明を行う。

耳にしたエルフィは「あー・・・あ?」と
納得したのかしていないのか悩ましい表情で。


「うーん、まぁなんとなくは分かったけど・・なんでまた結社なんかに」
「あ、そういえば居候の理由は聞いたことないかも?」

「あら、言いませんでしたか? 一目惚れなんですよ」
「・・・・?」
「?」


フィアナからは想像しにくい単語だったのか、
予想の斜め上の返答が来たのか、その場の全員から疑問符が飛ぶ。


「だ、誰に?」
「『剣帝』に」
「え」
「え?」

「・・・はァー!? ちょっ、アンタマジで言ってんの!?
 『剣帝』ってレオンハルト・・・アレだよ!?」
「実のお兄さんをアレ呼ばわりとは、なかなかな御関係ですね」


明らかに動揺したように見せるエルフリーデに、
フィアナはその場で温和な笑顔を浮かべながら小さく笑う。

一連の流れを見聞きしていたヨシュアも、驚いたように瞬きを繰り返している


「あの噂本当だったんですね・・」
「噂程度で済んでいたのですか?」
「僕は噂だと・・・ 貴女が一目惚れする人に到底見えなかったので」
「よく言われますし、自分もちょっとビックリしました」


オレンジ色の長髪を揺らし、彼女は口元を抑えてくすくすと笑う。
エルフィは彼女を見ながら、小さく「はー・・・」と呟く。


「(・・・成程、この子が一枚噛んでそうだな)」


小さく浮かべられたエルフィの笑みに、
フィアナはオレンジ色の髪を小さく揺らして頭を傾ける。

「なんでもないよ」と笑い混じりに答えるエルフィに、
フィアナは「そうですか?」とだけ返した。


「・・やっぱり、ちょっと雰囲気似てますね」
「あ、兄貴と?」
「はい。 どこが、と問われたら答えるのは難しいんですけど」


翡翠色の瞳を細めて、温和な笑みを見せるフィアナを
彼女は深い紫色の瞳で見つめていた。





(私も 雰囲気似てると思ったよ)
(誰とは言わないけれど)

(・・・・私は言えないけれど、)





 
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