小説

SC F
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望まれる変更と強き意志



シード中佐とリシャール元大佐の鮮やかな攻撃で、
彼を除く執行者4人という脅威から、
アリシア女王陛下とクローディア殿下の身を護りきって。


「女王陛下と姫殿下の確保も可能ならばという条件よ。
 2人とも、ここは引きましょう」
「フン、仕方ねぇな」
「・・・・・」


撤退を勧めるルシオラさんに、不服そうなレンちゃんの顔が視界に映った。

いくら計画に関わりが無いと言ったって、立場は立場だ。

執行者が絡むと強く出れない、武器を向ける許可も出ていない私は、
武器である弓を取り出すこともなく、彼らの動向を見守っていた。

不服そうな表情をするレンちゃんは、エステルちゃん達や、
女王陛下達を少し睨んだ後、身を引いた場所に居た私へと視線を投げた。


「フィアナ」
「はい」


撤退するかと思われた矢先への呼び止め。

ギルドのメンバーや、クローディア殿下は
レンちゃんが呼んだ私へと視線を向けた。


「最後にグロリアスでフィアナが聞いたの・・・あったでしょ?」
「はい」
「あれね、やっぱり取り消させて。 レンのとこには来ないで、ね」


彼女の言葉に疑問符を浮かべる遊撃士達。
意味を理解したのは私と、同じ質問を受けた執行者だけだ。

少し口元を緩ませて笑みを浮かべ、「承知いたしました」と述べると
レンちゃんは酷く安堵したように表情を和らげた。

会話が終えたのを見計らってくれたのか、
ブルブランさんがその場で翻り、杖を振った。

執行者、彼ら4人を纏う吹き荒れる薔薇の花弁。


「それでは諸君・・・我々はここで失礼しよう。
 だが次なる試練は既に君達の前に控えている」


ブルブランさんが忠告二言、ルシオラさんが別れを告げて、
・・・彼らは、女王宮から去った。

執行者が去ったことへの安堵と、服役中のリシャールさんが居る疑問、
街へあった火災等の被害対処と話が進んでいって。

ふとエステルちゃんが私へと視線を投げた。


「そういえば・・最後にレンと会話していたのは・・・あれは何の話?」


全員が同じことを思ってたらしく、視線が集中した。

問答があったのは、浮遊都市が出現したばかりのグロリアス艇内の話だ。
私はその時、各々がどんな反応をしていたかをよく覚えている。


「・・・彼らとの戦いが、避けられない時が来る」


だから、彼女の変更の申し出は 少し驚いたのだ。


「来たる最終決戦、私は執行者に武器を向けてもいいのかと問いました。
 返答は『執行者である彼ら、個々の判断に任せる』」

「え・・丸ごとは止め、られなかったんだ」
「そのようですね。 敵の頭数を増やしかねない許可だとは思ったのですが、
 私1人増えても計画にはさほど影響は無いと判断したのかもしれません」


実際私は戦闘のプロではなく、技術を覚えたばかりで初心者な方だ。
1人で街道の魔物と戦闘、しかも大型の相手となると特に危うい。


「許可が出なかったならば、私はその人に武器を向けることができない。
 戦闘に発展した際の活動が制限されることになります」

「・・・ということは、」
「レン・・・フィアナさんとの戦闘を拒んだってこと?」
「今し方。 最初は来てもいいよ、くらいの軽い返答だったのですけどね」


気まぐれな方だけど、先程のやり取りでは
彼女の『根底』が垣間見えた気がした。

元々従う以外の道は無いが、
あのような表情をされてまで押し切ることはできない。


「他にフィアナさんとの戦闘を拒否した執行者は?」
「ルシオラさん。 仲の良さが表に出てきちゃったかな」


ヨシュア君の問いに返事をするのもそう難しくない。

逆に言えば今名が挙がらなかった者には、
私が戦闘員として機能するということだ。


「『相手』っていうのには、勿論剣帝も含まれてるんだよね?」
「そうですね。 寧ろ筆頭ですもの」
「・・剣帝は止めなかったんだ、フィアナさんが敵になること」


ちょっと意外そうな表情をするエステルちゃんに瞬きを繰り返した。
・・・あぁ、成程。 言いたいことは大体分かった気がする。


「『長い時間を過ごしたから』
 それだけの理由で、敵となる意志を妨げる人でもないですよ」
「そう・・なの?」


疑問符を浮かべる彼女に私は頷いた。
なんてったって彼は他ならぬ『レオンハルト』だ。


「彼は優しい以上に強いもの」


微笑んで返す言葉に納得したのか、
そうでないような不思議な表情をするエステルちゃん。


「自分の意志とは異なるものを抱いてまで、こちらに従う必要は無い。
 ・・・そういう、ことじゃないかな」
「・・・・」

「行きましょうか。 街の被害対処しないと、なんですよね?」





(・・・フィアナさんって、強い人だよねぇ)
(?)
(戦力、も充分頼りになるくらい強いけど それ以上に意志、っていうか。
 何者にも揺らがない強い意志がある人なんだなって 最近、凄く思うな)
(・・そうだね、分かるよ)

(好きな人が敵ってだけで私、めっちゃくちゃ参ったのになー)
(え?)
(フィアナさんは意志じゃないからって自ら敵に回るんだもん)
(え、うん・・・え? さっきのは僕の話?)





 
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