小説

SC F
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執行者集結する聖堂再訪



粗方船内を散策し終えて、兵士さんの立ち話に混ざれば、
捕らえてきた遊撃士の目が覚めたらしいとの情報を耳にした。

数十分前に様子見に行ったエステルちゃんが起きたらしい。

・・・数秒考え込んで、兵士さん達に別れを告げて。
向かった先はエレベーター。

私を回収した理由は聞いたけど、
エステルちゃんの回収の理由までは聞いてなかった。

単純に行動を制限・・ならば、別に睡眠時に殺すのも容易だったと考える。

だとしたら、向かう先は一択だ。

認証機からの2度目の問いに、
同じように名乗り、同じように向かう先を指定する。


『―――認証いたしました』


受諾の声を伴い、エレベーターは上へと向かっていく。

両サイドに開く扉、その間を抜けていくと
降りたすぐ先にレンちゃんが待っていたらしく「あら」と声をあげた。


「うふふ、フィアナも来たの?」
「エステルちゃんが目覚めたって聞いて。
 来るならここかなと思ったんだけど・・当たりみたい」


彼女が起きるまで様子を見ていたのはレンちゃんだ。
エステルちゃんを案内するのも彼女だっただろう。

そのレンちゃんがここに居るということは、
自然とエステルちゃんもこの先に居るのだろうと推測が付く。


「もうみんな揃っているわ。 レン達も行きましょ」
「あ。 わ、」


そう言ってレンちゃんは、小さい手で私の手を掴んでは
聖堂へと引き連れていった。

聖堂への扉を開けば、今まさに。
エステルちゃんがレオンさんの剣で弾き飛ばされたところだった。

彼らの元まで聖堂の長い通路を歩き進む。

教授を中心に続々と姿を現す執行者の面々。
・・・あ、カンパネルラさんも居たのか。

完全に敵陣であるこの場所で、執行者が勢揃いして。
微かな狼狽えを見せる彼女に、レンちゃんが呆れたように口を挟んだ。


「もう、みんなでエステル驚かしたらダメじゃない」
「女の子いじめはよくないですよ」
「クク、別にいじめちゃいねぇよ」


続いて挟んだ私の声に、ヴァルターさんが否定の言葉を1つ。

レンちゃんの声に振り向いたエステルちゃんが、
背後から来た私達を認識する。


「レン・・それにフィアナさん・・!? フィアナさんまでこっちに、」
「あはは、なんでか私まで回収されて」


頬を小さく掻く私に、彼女が不安そうな表情を浮かべる。
・・・そういえば、こうして結社側に立つのは初めてか。


「な、 フィアナさんは、なんでここに、」
「君と一緒に彼女を回収した理由は、計画に干渉されないためだよ。
 いくら全貌を知らない、と言っても彼女は知りすぎているからね」


エステルちゃんの疑問に答えたのは教授だった。
回答でまた教授の方へと振り向くエステルちゃんに、小さく眉を落とした。


「うふふ・・・心配しなくてもいいわ。
 別にエステルを殺すために集まったわけじゃないから」
「へ・・・」


レンちゃんは歩きだし、彼女の隣を通り過ぎて教授の元へと近づく。


「ねぇ、教授。 早く例の話をエステルにしてあげて?」
「フフ・・そうさせてもらおうか」


護るように教授の前に立っていたレオンさんが、その場から数歩離れる。

先頭になり顔を出した教授は、エステルちゃんを見据えて。
とんでもないことを言い出したのだ。


「どうだろう、エステル君。
 『身喰らう蛇』に君も入ってみる気はないかね?」
「へ・・・・」
「・・!」


待って、その展開は聞いてなかった。



(・・そうか、 これが、レオンさんが言っていた教授の手口)
(・・・嗚呼、成程。 確かにこんなに厄介な人そうは居ない)

(教授が呼び出した兵士に、彼女が連れていかれる直前)
(私は祈るようにエステルちゃんの手に触れたのだ)





 
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