小説

SC F
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人伝いで認識する存在と



アルセイユが墜落され、浮遊都市に不時着陸してから数十分。

探索する前の準備、及び墜落したアルセイユの状態確認として
各々が散り散りになっている中、私はアルセイユの一室で
オーブメントのクオーツを付け替えていた。


「(この間エステルちゃんに魔防4貰ったな・・
 風固定で嵌めていたとこを入れ替えようか、)」


自分のオーブメントは5連結で風固定だ。

彼から渡された時には「お前が風なのは意外だったな」と言われた。
その後しばらくして「納得もしたが」と言われ目を丸くしたものだけど。

風固定のところに付けていた回避4の付いた、
緑色のクオーツを爪で引っ掛けて外す。

机の上にそれを起き、すぐ傍にあった
別の緑色のクオーツを手にとって嵌めようとした。

ふと背後の扉がガシャ、という音も共に開く。


「あ、フィアナさんここに」


独り言のような呟きに振り返ればヨシュア君が立っていた。
私の姿の認識した彼は室内に一歩立ち入る。


「今お時間いいですか?」
「はい。 クオーツセットももう終わるので」


カチリ、と音を鳴らしてオーブメンの風固定を魔防4に入れ替える。

ヨシュア君は座る私の隣に立ち、覗き込むように
私の手元のオーブメントを見つめた。


「・・フィアナさん、意外と良いオーブメントですね」
「やっぱりそう思う?」
「5連結で風固定なので使い勝手が良い印象を受けます」
「風付けないと打てないアーツって意外と多いですものね」


笑いながらセットし終え、オーブメントの確認をした後、
テーブルの上に置いていたクオーツを回収。

クオーツ用の箱にそれぞれ入れた後、
テーブルの角を挟んだ先の椅子に腰を下ろしたヨシュア君へと目を向けた。


「話ですか?」
「はい。 浮遊都市の探索を始める前に、少しだけ・・いや、
 黙ったままというのもあまり気乗りしなくて」
「うん」


そうして彼の言い出すのを待つ。
静寂が室内を包み込んでいる。

ヨシュア君の口が動きそうで動かない。


「・・・すみません、なんだろ。 言いづらいな、」
「大丈夫ですよ、ゆっくりで。 まだ皆、準備中なんでしょう?」


頷いた後、彼はまたしばらく悩むような表情をした。

少しして「フィアナさん、って」と
いつか聞いたばかりのような言いかけた言葉に頷く。


「・・僕の、姉さんに似てるなって 思って」
「カリンさん?」


フィアナが何の迷いも無く聞き返せば、
その名が出てきたことに驚いたような表情をするヨシュア。

目を見開いたような彼の表情は少し珍しい。
「どうして、」と小さく呟かれた言葉。


「・・・知ってるんですか?」
「ごめんね、レオンさんから粗方聞いちゃった。
 ハーメルで起こった一連の出来事も知ってるんです」


フィアナは申し訳なさそうに眉を寄せて謝った。
更に驚いたように口を開くヨシュア。


「・・・レーヴェが話したんですか?」
「うん。 ヨシュア君のことも聞いてるよ。
 もしかしたら君が考えてるよりも、ずっと」
「・・レーヴェが、」


それほど意外だったのだろうか、
フィアナの返答にしばらく考えた素振りを見せるヨシュア。

彼女はその様子を見ながら、
最初ヨシュアが伝えたことを笑いながら聞き返した。


「私がカリンさんに似てるって?」
「あ、はい」
「話聞いた限りはあまり思わなかったけど・・似てるんだ?」

「髪色は真逆なほど違うので、
 容姿・・から来るものではないと思うんですけど」
「うん」


真剣に考える様子のヨシュアに、フィアナは目を伏せて微笑み頷く。
その様子を見、ヨシュアは思考を止めて見上げた。


「・・あ、」
「え?」
「今、の 似てました」
「え?」

「頷いて笑ってる、雰囲気が」
「・・ふふ、思ったより具体的。 他に似てたなって思う箇所は?」
「時折、驚くくらい鋭いところ とか」
「んー、そんな鋭いかな・・」


今度はフィアナが考え込む様子を見せる。

本人はあまり鋭い自覚は無いらしい。

所謂「察した」のも、要所にヒントがあったからこそ
出てくる自然な答えかもしれない、と本人は言った。


「・・案外気にするんですね、」
「自分もこんなに気にするのも不思議なんだけど・・・
 レオンさんに恋愛感情抱いてる身だから 複雑、なのかも」
「(幼いながらの記憶しかないけど確かに2人仲良かった)」





(・・でもそっか、レーヴェ・・・そこまで言ってたんだ)
(そんなに意外だった?)
(あまり自分の話をする人じゃないから)
(確かに。 身の上話する彼の姿、凄く珍しかったです)

(相手がフィアナさんだったから、ですかね)
(私? ・・カリンさんに似てたからとか?)
(・・いや、 ・・・逆だと思うな)
(え、逆?)





 
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