小説

SC F
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浮遊都市上陸1時間経過



彼が操るドラギオンがアルセイユを墜落させ、1時間経っただろうか。

男性陣が地に突き刺さったアルセイユの瓦礫を
なんとかしてどかそうとしているのを、甲板上から見ていた。

腕力あれば私もお手伝いできたでしょうに・・・
生まれ持ったものはなんとやら。 こればかりは諦めるしかない。

溜め息を1つ付くと、甲板下から聞きなれた声がした。
甲板から少しだけ身を乗り出して様子を伺う。

身を乗り出して視線を落としたほぼ真下に、
エステルちゃんやヨシュア君達が何やらか会話しているのが見えた。


「あら、エステルちゃん達。 今から出発ですか?」
「あ、フィアナさん。 そう、今から探索してくるね」
「そうでしたか、どうかお気をつけて」


小さく手を振ると、エステルちゃんは返事と共に手を振り返してくれた。

と、ほぼ同時に 微かに聞こえてきたモーター音に顔を上げる。
ヨシュア君も気付いたのか、警戒気味に顔を上げた。


「え? フィアナさん・・え、 ヨシュアもどしたの?」
「・・・何か来る」
「え・・!?」


エステルちゃんの疑問に答えたのはヨシュア君だった。

空から、私の倍くらいの大きさの平たい中型機械が飛んでくる。

攻撃を仕掛けてくるような様子はなく、
ただ私の周りをぐるぐると回っていた。

よくよく見ると平たい機械の上には、人1人乗れそうなスペースがある。


「攻撃はしてこないみたい・・?」
「なんだろ、これ? ・・・乗れってことかな」


私の声に、ピー ピッピッ と、機械音で反応が返ってくる。


「え、でも危ないんじゃ・・! 変なとこ連れてかれたら、」
「大丈夫・・とは言い切れないけど、私ご指名みたいですね。
 ・・・この機械人形よこしたの、レオンさんかな」


私の言葉の後に、また機械人形が機械音で反応する。
まるで呼ばれてるみたいだ。

機械人形は甲板のふちに位置して、
私に乗るように催促している・・ように見える。

アルセイユの下で心配げに顔を上げてるエステルちゃん達に苦笑いを零した。


「そんな心配そうに見ないでくださいな。
 行けるものも行けなくなっちゃいます」
「で、でも・・」
「大丈夫ですよ。 こう見えて私、結構強運なんだから」
「強運そうなのは見て分かります」


苦笑気味に笑ったヨシュア君に、また小さく笑いかけた。
甲板の縁に足を掛ける。


「ふふ、なら大丈夫。 死にはしないよ。 ・・・ちょっと行ってきますね」
「お気をつけて」


ふちを蹴って、機械人形に飛び乗る。
持ち手らしい円を2つ、片手ずつ掴んだ。


「できる限りすぐに戻ります。 ・・行って!」


―――ピピピッ メイレイ、ジュダク

機械音が録音されたような声に変わり、機械人形は空にと飛び立った。

みるみるうちに離れていく地面を見て、
・・この時ほど高所恐怖症じゃなくてよかったと思ったことはない。

それにしてもこの機械人形は、私をどこに連れて行こうとしてるのやら。



「・・・行っちゃった」
「・・フィアナさんってよく呼び出されてるの?」
「うーん・・・わりと、かなぁ?」





 
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