小説

SC F
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追いかけた少女の在り方



マーケットの被害収束に務めた後、
ギルドでラヴェンヌ村が襲われたと報告を受ける。

目を伏せて思い浮かぶのは、ボースマーケットの
真上に着地したあの竜と、・・・彼の姿。

飛び立つ前、一目向けられたあの意味ありげな表情は一体。

ティータちゃんの同行に許可が下りるところで、
「エステルちゃん」と、声をかけた。


「・・私も、連れて行ってくれませんか?」


広げた手の平を胸に当てて、困り気ながらも、
私の思い全てを精一杯込めて伝えた、たった一言は、
空間全てが一瞬静寂した後、エステルちゃんから承諾が下りた。

胸を撫で下ろして、お礼とお辞儀を1つ。

これが、私の在り方だと思ったから、その行動に移すまで。







間一髪で潜り抜けた竜の吐き出す炎に驚いて、
後ろを振り返ったら進むに進めなくなったエステルちゃん達の姿。

エステルちゃん達と私の間には竜が高度落として構えていて。


「フィアナさん! 私達のことは気にしないで行って!」


エステルちゃんの必死さと懇願に似た声に、口を噤み、
背をエステルちゃんに、足を彼らの方へと向けた。

遠めながらティータちゃんがアガットさんを庇うように、
前に出て、 レオンさんが、剣を向けてる。

ティータちゃんが動力砲を落として、
アガットさんの前で両手を広げたのが見えた。


「・・・・フッ、健気なことだ」


レオンさんは剣を下ろして、私の方を一目見やった。

しっかり目が合ってしまって、思わずギクリと肩が跳ねる、
それに怯まず、彼の隣までゆっくりと確実に歩いた。

ティータちゃんが少し驚いたように、私を見ているのが視界の端に映る。


「フィアナお姉ちゃん、」
「・・・お話は終わりましたか?」
「終わった」


目を伏せたレオンさんに、少しだけ笑った。

ティータちゃんの後ろで私を見つめていた、
アガットさんに気がついて、会釈を交わす。

手を後ろで組んで、レオンさんの様子を見ていた。


「・・大分予定が狂ったな、
 邪魔も入ったようだし、今回はこれで退いてやろう」
「え・・・」


呆けた声を出したティータちゃんを一目見てから、
飛空挺が降りてくる音に顔を上げる。

紺色の、王国軍の飛空挺。


「フッ、ようやくのお出ましか。
 これで最後の実験を始めることができそうだ」
「れ、レオンさん!」


竜に飛び乗ろうとしかけた彼を思わず引き止める。
レオンさんは一瞬悩んだ表情をしてから、私の手を引いた。


「へ、」
「お前は付いてこい」
「え、 っわ!」


了承の言葉を紡ぐ前に、既に足は地から浮いていて。

引かれた腕から、背中と足裏にレオンさんの腕が回っていて、
軽々と持ち上げられ、横抱きにされて、る。 え?


「な、な・・っ!」
「この娘は暫く借りるぞ」


そう言った矢先、竜に飛び乗るレオンさんと抱えられてる私。

ただひたすら困惑するしかない私とは裏腹に、
既に地上は大分遠退いている。 え、え。

竜の上で下ろされ、座り込んだ足を崩す。
う、うわ、すごい、竜ってこんな感触するんだ。


「ちょ、ちょっと! あんたフィアナさんに何かしたら・・!」
「心配せずともこの娘に危害を加えはしない。 すぐに返す。
 ・・・フフ、『返す』は語弊か。 貸しているのだからな」
「な・・・!?」

「人を本みたいに・・・」


ボソリと呟いた言葉は聞き取られてしまったらしい。
隣で「はは」と小さく笑うレオンさん。


「しばらく帰されない感じですか?」
「帰さないな」
「・・・あー」


口元に手当てて少々悩む。
これ以上深入りするなと。

小さく頷いてから、竜の上に立ったり座ったりな私達を
見上げるエステルちゃんに目線を落とす。


「エステルちゃん、ごめん! 今回の件お願いするね!」
「・・・! 分かった!」


右手に握り拳を作って「任せて」のポーズを取る彼女に、
目を細めて少しだけ笑った。

エステルちゃんなら大丈夫、きっとどうにかしてくれる。

お邪魔らしい私は大人しく回収されましょう、はい。



(フン、古代竜にそのような攻撃が通用するものか)
(きゃ・・! ちょ、 お、落とさないでくださいね・・!?)
(黙って捕まっていろ)





 
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