小説

SC F
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剣聖の娘の様子は如何程



コンコン、とドアをノックをする。
すると時間差なく、ガシャッという音と共にドアが開いた。

部屋の中の様子を覗けば、ベッドの上で眠ってるエステルちゃんと、
脇の椅子に座り、エステルちゃんを見ていたレンちゃん。

レンちゃんはドアの前に居る私を見上げた。


「あら、フィアナ」
「レンちゃん」


少しだけ笑って会釈して、部屋の中に入る。

エステルちゃんの表情はただ眠ってる、ようには見えず。

若干眉を潜めてることから、
もしかしたら夢を見てるのかもしれない。

レンちゃんは「うふふ」と笑いながら、私を再度見つめた。


「目が覚めたんだ。 一緒に眠らせちゃってごめんね?」
「ううん、寧ろ来ちゃってごめんね。 邪魔だったでしょ」


冗談めかして笑えば、微笑みながら「全然問題なかったわ」と返された。

・・・こ、この返しは流石に・・・
居ても居なくてもあまり変わらなかったレベル?

あ、そういえば、と思い出したことを口に。


「ねぇ、レンちゃん。 教授とレオンさんは、
 拠点付いてきた私について何か言ってた、?」


レンちゃんは何度か瞬きをして、何かを察したのか、
何かを思い出したのかまでは分からないけど、「あぁ」と笑った。


「拠点上陸から、私達の元に到着するまでの時間からして
 道案内はしてないだろう、という結論に至ったわ」
「あ、・・・そっか」
「よかったわね、フィアナ。 不問よ、お咎めなし」


レンちゃんのその言葉にほっと胸を撫で下ろす。

ああ、よかった。 レオンさんも教授も何も言わなかったけど
教授と顔合わせた時、すぐにレオンさん来たから。

言うタイミング変えたとかじゃないかなって一安心。

そういえば教授はまだ聖堂の中でしょうか。


「実際はどうだったの? 教えてた?」
「全然。 流石に情報だしまずいかなーと思ったし。
 だからひたすら迷うエステルちゃん追っかけてた」


あの建物は流石に迷うよ、なんて笑う。

入り組んではいるわね、と返された辺り、
レンちゃんはあまり迷ったことはないらしい。


「・・エステルちゃん、昨夜から目覚めないの?」


ベッドで眠ったままのエステルちゃんは、
相変わらず顔はよろしくない。

私も私で睡眠ガスの効果時間より、長く眠ってたらしいけど・・
それは疲れでの一眠りが重なっただけで。

エステルちゃんはプロだし、私みたいに疲れたなんてことは・・・
まぁ、あっても私より目覚めないというのは可能性ないような。

そんな疑問はレンちゃんが晴らしてくれた


「夜間は眠らせてたそうよ。
 深夜に起き上がられても困るからって」


うふふ、いくら教授でも睡眠は必要だものね。
なんて笑うレンちゃんに、なるほどと思いながら短く笑う。

まぁ、そりゃそうだ。

彼女の様子を見るという目的が成せたことに小さな達成感を覚える。


「じゃぁ私はそろそろ退散しよっかな」
「あら、もういいの?」
「うん。 多分今日中にまた顔合うだろうし」


船内散策も途中だし。 と心の中で付け足す。

扉の前でエステルちゃんの様子をもう一度見る。

変わらないその様子を一瞥してから、
椅子に座ったままのレンちゃんに顔を向けた。


「エステルちゃんのことよろしくね」
「うふふ、任せて。 また後でね」


手を小さく振って廊下に出た。

執行者であるレンちゃんが彼女を見張ってるからか、
近くに兵士が居るような気配はしない。

・・・・

時間改めてもう一度聖堂の様子見に行こうかな、
レオンさんもまだ聖堂だろうか?

拠点に置いてあった小説はどこへ行ったのだろう、なんて。

近いうちに読書会の許可は降りるだろうか、と
楽しみにしつつ廊下を当てもなく歩き出した。





 
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