小説

SC F
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遊撃士とまさかの遭遇



背後からひょこひょこと平原を跳ぶ音。
平原内を走っていく音、吹き付ける風。

トラット平原を随分走った後、ストーンサークルの入口で振り返る。

もこもこのヒツジンを2匹確認し、弓を構えて振りかぶった。


「はっ!!」


ゴンッ、と鈍い音と同時に、ヒツジンが弾き飛ばされる。

「・・・その使い方は明らかに間違ってるが」と、
彼に呆れられはしたが、こればかりはしょうがない

遠距離武器ですし、近くに来られてしまったら狙えません。

念を押して、弓を持ち直して矢を手に取る。
心配は杞憂に、弓で強打を食らったヒツジン2匹は飛び跳ねながら去った。

矢を持った手の甲で額を拭う。


「ふー・・・やれやれ。 元気が良すぎるのも考えものですね」


矢をしまい、また1つ息を吐く。

1人で街道通れるようになったと言っても、
相手が少数だった場合、っていうのが辛い話で。

結構数居たし、減るまでここで待機でしょうか。

そう言って、ストーンサークルの中央の方へと、
足の向きを180度変えて背後を振り向く。

そして視界に映る人影。
・・・あれ、誰も居ないと思ったら居た。


「あら、先客・・・」


弓を縮小させながら、彼女らの姿を視界に収める。
4人ほどか、私を見つめてぽかんとして突っ立ってらっしゃる。

・・私何かしましたか。 あ、お邪魔でした?


「(こいつ・・今、弓で殴ってたな)」
「(・・・だよね? 気のせいじゃないよね?)」

「あっ、」
「ティータ?」


赤髪の男性の後ろからひょっこり顔を出した帽子を被った女の子の姿。
見覚えがありすぎて思わず「あ」と一言呟いた


「ティータちゃん?」
「フィアナお姉ちゃん!」


ティータちゃんはたたたと走ってきて、私を真正面から抱き締めた。
思ったより衝撃来てけほ、と短く咳。 なんとか抱きとめる。

おお、ティータちゃんもしかしてちょっと背伸びた?


「久しぶり、ティータちゃん。 元気だった?」
「う、うん! フィアナお姉ちゃんこそ、
 あの 大丈夫だったんですか・・?」
「ふふ、ご覧のとおり」


ひらりと手を広げてみせる。

ほっとしたように笑ったティータちゃんを、帽子越しに頭を撫でる。
目を細めて小さく笑う。 ・・心配してくれてたんだね。

そしてその心底安心したような表情を見て、少しだけ申し訳ないなと。


「・・フィアナ? ・・・フィアナ・・・」
「あれ、どしたの? アガット」
「いや、どっかで聞いた名だと思ってな。 フィアナ・・・」
「フィアナ・・・フィアナさん・・・」


少しだけ顔を上げると赤髪の男性と共に、
オレンジに近い茶髪のツインテールの子が悩んだ顔をしてる。

・・・・あ。 あのツインテールの子、遊撃士の子だ・


「で、でもでも フィアナお姉ちゃん、
 どうしてこんなとこに? おうち帰ったんですか?」
「あー・・家はまだ。 申し訳ないんだけど、なんだか気まずくて。
 私がツァイスに来てること、お母さんには内緒ね?」


人差し指を唇に当てて苦笑い。
ティータちゃんは、疑問符浮かべた後 2回頷いた。

ティータちゃんは私が左手に持ってた縮小弓を見て、
思い出したかのように口を開いた。


「あれ・・? フィアナお姉ちゃんって弓使えたんですか?」
「弓はつい最近習ったの。 慣れてきたし、実践しようと思って」
「あ、 だからヒツジンに追われていたんですか?」
「そう。 それでこっちに逃げ込んできたの」


もー元気有り余ってるから振り切れなくって。
そう続けて笑いながら大きく息を吐いたらティータちゃんも困り顔で、


「あうぅ〜・・大変だったんだね・・・
 さっき私達も魔獣に襲われて大変だったんです」
「ティータちゃん、たまに忘れた頃に
 魔獣に襲われてるイメージあるんだけど・・気のせい?」

「そ、そんなこと・・! き、気のせいです!」
「ふふ、そっか 気のせいか。 ティータちゃんはお仕事? かな?」
「あっ、うん。 あのね、ギルドのお手伝いしてるの」


「そっか、お疲れ様」と伝えて、彼女の頭を撫でる。
嬉しそうに笑うティータちゃんの笑顔も随分と懐かしい。

ふと突然、ツインテールの女の子から
「あぁー!」っという声が聞こえ、思わず肩がびくっと揺れた。

何事かと思って顔を上げたら、女の子が、
私に指を差してて え、え?


「この間ツァイスに寄った時に依頼が入ってた! あのフィアナさん!!」
「行方不明捜索の奴か!」
「えっ、は、はい! フィアナ・エグリシアです!」


赤髪の方も同様に声を上げて更に驚く。


「あ、あのね、2ヶ月前? フィアナお姉ちゃんのお母さんがね、
 フィアナお姉ちゃん探してほしいって、依頼をギルドにしてて」
「そうだったの、 ・・あ、やっぱり・・?」


ただひたすら困惑する私に、
横から説明を入れてくれたのはティータちゃんだった。

っていうか、ギルド沙汰なってました? やっぱり?

1週間音沙汰なしだったもんね、お母さんごめんなさい。
あなたの娘、フィアナは元気です。

その依頼請けたのが彼女達ってことか、成程。
と納得したのも束の間、やっぱりどこか縁があるなと感じた。


「もしかして私が残した手紙のこともご存知ですか?」
「知ってるよ。 フィアナさんの手紙、確かにお母さんに届けたわ」
「よかった・・ありがとうございました」


彼女達にお辞儀をする。

ほっと胸を撫で下ろした。 届いててよかった
家に直接入れるのもなんか気が引けちゃって、

女の子は笑いながら、私に手の平を見せてた。


「あはは、お礼はいいのよ。 仕事だし。
 それでその、手紙渡して依頼完了、ってことになったんだけど
 どうしてギルドに手紙を? 直接会ってもよかったんじゃ?」

「あー・・はは、や、流石に直接会うのは気まずくて。
 無事さえ伝えられたら、安心するかなと思って。
 手間をお掛けする形になってすみません」


苦笑いしながら頬をかく。
そうなんだ、と一言女の子が呟いた。


「あ、そうだ。 あまり戦い慣れてないなら街まで送ろっか?」
「いいんですか!? やった、また目付けられたらと困ってて」


両手合わせて笑ったら、ツインテの子も微笑んで。

彼女は「それじゃぁ行きましょ!」と先陣を切って、
ストーンサークルの入口を通っていった。

その後ろを小走りで追いかける。

そういえば私、彼女の名前を未だに聞いた事がない。


「なんつーか・・・読めない奴だな」
「フィアナお姉ちゃんらしいですよー」





(遊撃士さん達に出会ったのは本当に偶然だけど、
 ・・・これって報告必要なのかなぁ、)





 
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