小説

SC F
21ページ/42ページ




拠点の最終地点に到着



「どう、し・・・、」


睡眠ガスを吸って遊撃士達と共に眠り込む彼女。
その様子をガラス越しに教授とレンが見ていた。


「あらら。 フィアナまで寝ちゃった」
「来てしまったものは仕方がないね。 許容してもらわないと」


教授がリモコンを操作してガスを抜き、分け隔てていたガラスが開く。

歩いて彼女に近寄り、上半身を腕で支えて起こす。
すう、と小さく立てる寝息に少しだけ安堵する。

目立った怪我は・・・ないようだ。

予想していた通りに上達していってるのか、
それとも遊撃士達が彼女に気を掛けてるのかは知らんが。


「・・・彼女はどうする?」
「ふむ、 ・・回収しておこうか」
「あれ、拾ってくの?」
「そろそろ話をしたいとは思っていたし、
 それにあまり敵には回したくないだろう?」


レンに向けて問われた言葉に、少し「んー」と一拍の悩み。


「そうねぇ、じゃ連れていきましょ!」
「・・どことなく嬉しそうだな? レン」
「うふふ、そう見える?」


レンはひらりと白いドレス揺らして、階段に足を掛ける。

フィアナの膝の裏に腕を回して持ち上げた。
相変わらず細い・・・というか、軽いな。


「あ、レーヴェ! エステル忘れちゃだめなんだからね!
 メインそっちなんだから!」
「分かってる」







彼女の様子を見始めから約2時間ほど経ったか。

持ってきた本1冊を読み終え、2冊目を少し捲ったところで時計を見た。
0時過ぎ・・・日付が変わってしまったな。

フィアナの様子を見ると未だ大人しく寝息を立てている。

・・・それにしてもよく眠る。
睡眠ガスの効き目はとっくに切れてるはずだが。

パラリと1ページ捲ったところで、視界の端で彼女が身動ぎ。
読むのを中断し様子を見る。


「・・・・ん」
「・・目が覚めたか」


半分だけ開いた瞳が、顔を傾けてこちらを見る
まだ少し眠いのか、目元に手を当てて部屋を見回す。


「・・・レオンさん、」


フィアナは眠そうに体を起こした。

読みかけていた小説を閉じ、
サイドテーブルの上に載せてた1冊目の上に置く。


「具合でも悪いか?」
「え? な、何故?」
「効果は切れたはずなのに、お前がなかなか目を覚まさなくてな」


そう伝えると彼女は思い当たりがあるかのように「あー、」と。


「疲れてしまったのかもしれません、
 ずっと走り回ってて、遊撃士さんと連戦でしたから」
「・・・いや、疲労だけならいい」


部屋を軽く見渡して、窓の外に視線を移したフィアナ。
短い瞬きが繰り返される。


「・・私、なんでここに居るんですっけ?」
「付いてきたから一緒に回収した」
「回収って」


そう言い、笑ったフィアナははっとしたように俺を見た。
・・相変わらず勘が働く奴だな。


「・・・誰が?」
「教授が剣聖の娘に話があるらしいな」
「・・エステルちゃん、 彼女は今どこに?」
「別の部屋で眠っているはずだが」

「・・・・」
「・・心配ならば見に行くか?」
「いえ、 いいです」


その言葉と同時に首を横に振った。
予想外な返事に驚きつつ、まだ何か言いたげな彼女の次の言葉を待つ。


「エステルちゃんには何もしないんでしょう?」
「あぁ」
「ならいいです、」


目を伏せて、「大丈夫」と呟いた彼女の心情は如何ほどか。
・・・何を考えているのだろうか。


「今、何時ですか?」
「先程日付が変わった」
「・・・朝まで寝ればよかった・・」
「フ、それはそれで俺の睡眠時間が削られるな」

「・・ずっと傍に居てくれたんですか?」
「2時間ほど」


少しだけ驚いたように目を見開いて、彼女は微笑んだ。

フィアナは笑いながら背伸びをした後、部屋の窓の外を眺める。
部屋に明かりが付いているために、星はほとんど見えない。


「今から寝直せるかな・・」
「・・寝付けないようなら船内散策の続きでもするか?」
「あ、ほんとですか? 目も覚めてるし・・お願いしようかな」


小さく息を吐いて椅子から立ち上がる。
サイドテーブルに置いていた小説2冊も回収。

続けて立ち上がるフィアナに手を貸した。

さて、彼女は真っ先にどこに行きたいと言うだろう。


「あ、でも今0時なら星綺麗に見えますよね。
 雲もないし・・甲板行きたいな」
「・・・フ、」
「・・・なんで笑うんですか」
「いや、相変わらずだなと。 悪い意味ではない」





 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ